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  • 富士山を背景にしたトニー・エバレットさん
  • 太平洋に面した山のふもとにある静岡県熱海市
  • 旧東海道「箱根八里」の景観の一例
  • 静岡県河津町の早咲きの桜(2月)
  • 歌川広重作「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」

December 2020

“古道・東海道”の再発見

富士山を背景にしたトニー・エバレットさん

アジア太平洋地域で旅のエキスパートとして活躍してきたトニー・エバレットさんは、自然や歴史的な遺構に恵まれた静岡県熱海市に定住して、静岡県の観光振興に取り組んでいる。

旧東海道「箱根八里」の景観の一例

フィジー共和国で生まれニュージーランドで育ったトニー・エバレットさんは、これまで30年以上にわたりアジア太平洋地域の観光振興に従事しており、ニュージーランド、フィジー、シンガポール、中国の上海、東京など様々な場所で暮らしてきた。そうしたエバレットさんが、「最も魅力のある地」と感じて2015年に定住を決めたのが日本の静岡県だった。

エバレットさんが住む静岡県は本州のほぼ中央に位置し、東西の約155キロメートルが太平洋に面している。自宅を構えたのは、趣ある海沿いの温泉地で伊豆半島の付け根に位置する熱海市。熱海の温泉は歴史が古く、開湯は8世紀の初めとも伝えられている。伊豆半島は、早ければ2月に見ごろになるあたみ桜や、河津桜まつりも名高い。

「私は、太平洋の海を見晴らせる丘に建つ家で暮らしています。日本の蒸し暑い夏でも冷涼な風が吹く。冬でも温暖です。こんな環境でありながら、丘から降りて、東京都心まで、新幹線を使えば45分で行けます。これは21世紀的なユニークなライフスタイルです」とエバレットさんは話す。

太平洋に面した山のふもとにある静岡県熱海市

彼は、現在、観光地域づくり法人『静岡ツーリズムビューロー』で戦略アドバイザーとして、観光の開拓やマーケティング、観光業に携わる人材育成などに取り組んでいる。

「日本は観光をするのに、とても素晴らしい国です。日本人は当たり前だと思っていることも、世界から見れば稀有(けう)なことなのですよ」とエバレットさん。「日本は世界的にも先進的な、持続性のある公共交通を整備しており、他のインフラも充実しています。また、人々の社会的責任感の高さが治安の良さを生み出しています。そして、日本人には、心を尽くして来客を迎える“おもてなし”の心があります」

その中でも、静岡県には豊富な自然と文化の観光資源があるとエバレットさんは言う。

静岡県河津町の早咲きの桜(2月)

年間を通じて穏やかな気候に恵まれた静岡県は、素晴らしい自然を活かしたトレッキングやサイクリングなどアクティビティを楽しめる。太平洋沿岸はマリンスポーツが人気である。世界遺産であり日本最高峰の「富士山」もある。

また、熱海へは、隣接する箱根と合わせて訪れることもできる。特にエバレットさんが注目するのが、神奈川、箱根を経て静岡へと通じる古道「東海道」である。

「江戸(現在の東京)、京都、大阪を結ぶ歴史的な街道で、400年の歴史を持つ東海道は、ほぼ同じようなルートを最先端の東海道新幹線が走っています。来日する外国人の多くが東海道新幹線に乗りますが、その名前が歴史ある街道から取られていることは、知られていません」とエバレットさん。

歌川広重作「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」

江戸と京都を結ぶ東海道には、旅行者が旅の疲れを癒す53か所の宿場が置かれたのだが、このうちの半数近くは静岡県内にあり、今も往時の宿場町の面影を残している。

エバレットさんは今年、訪日外国人向けにこの古道を歩いて旅するツアーを企画する会社「HIKE箱根八里」を設立した。箱根八里とは、旧東海道で言えば、小田原から険しい箱根峠を経て三島市までの約32キロメートルの区間である。エバレットさんは「ここを訪れる方には、この絵のような、歴史的街道を歩いて旅することの精神を感得していただきたい」と抱負を語る。

今年は世界を襲ったコロナ禍により自由な移動が制限されたが、「HIKE箱根八里」の始動が待ち遠しい。そこでは、昔の日本人が東海道を自分の足で歩いて旅していた時代に思いをはせながら、一人ひとりが心に残る旅の物語をつむいでいけるに違いない。