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  • 無償資金協力「台風ヨランダ災害復旧・復興計画」で、高床式の建物に再建された小学校
  • 耐震住宅に関するJICAの実技研修を受けるネパールの職人
  • ネパール地震の後、JICAの支援で建てられた耐震住宅

June 2020

世界の「より良い復興」のために

無償資金協力「台風ヨランダ災害復旧・復興計画」で、高床式の建物に再建された小学校

地震や台風などの自然災害の教訓を活かし、日本は災害に強い国づくりを進めてきた。今、日本はその中で蓄積した知識や経験を、「より良い復興」(Build Back Better)という理念の下、世界に発信して、防災、減災に貢献しようと努めている。

耐震住宅に関するJICAの実技研修を受けるネパールの職人

国際的な防災戦略を議論する国連防災世界会議がこれまで3回、日本で開催されている。2015年の第3回会議は、2011年の東日本大震災の被災地である宮城県仙台市で開催され、「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。その中では、(1) 災害リスクの理解、(2) 災害リスクを管理する災害リスク・ガバナンスの強化、(3) 強靭性のための災害リスク削減への投資、(4) 効果的な災害対応への備えの向上と、復旧・復興過程における「より良い復興」という4つの優先行動が定められた。

「より良い復興」とは、被災地を災害以前の状態に復旧するだけではなく、災害前よりも災害に強い状態に再建するという理念である。自然災害の発生が多い日本では、その教訓を踏まえ、大きな災害を受ける度に、防災に関連する法律の制定、防災インフラの整備など、様々な対策を実施してきた。こうした対策が、安全な社会の維持、安定的な経済成長を支えてきたのである。

現在、こうした経験を活かし、日本は国際的な防災協力に力を入れている。

「開発途上国では、被災地域に被災前と変わらない街並みが再建されることがありますが、再び災害が発生すると以前と同じような被害を受けてしまうこともあります」と国際協力機構(JICA)地球環境部の松元秀亮さんは話す。「こうした同じ被害を繰り返さないためには、災害の教訓を踏まえたインフラや法制度の整備など、その国全体を災害に強くする支援が必要となります」

JICAは開発途上国で、「より良い復興」を目指した様々なプロジェクトを実施している。

以下、二つの国で行った支援プロジェクトを紹介する。

フィリピン共和国

2013年11月、フィリピンに大きな被害をもたらした「台風ヨランダ」の被災地では、2014年2月から「台風ヨランダ災害緊急復旧復興支援プロジェクト」をスタートした。この技術協力で、高潮・洪水などを想定したハザードマップの作成や、自治体職員や住民がハザードマップを見ながら地域の避難計画を話し合うワークショップの開催などの支援が行われた。その結果、フィリピン政府の独自予算で防潮堤が建設されている。また、無償資金協力「台風ヨランダ災害復旧・復興計画」では、小学校や病院の再建、電力、空港、気象レーダーの復旧に必要な機材調達を支援した。小学校は、高潮の力を受け流す高床式で再建され、同時に広い廊下を設けて災害時には避難場所として使えるように工夫もされている。

ネパール連邦民主共和国

ネパール地震の後、JICAの支援で建てられた耐震住宅

2015年4月にネパールで発生した大地震の被災地においては、地震により全壊した住宅の再建を支援した。この地震では約50万戸の家屋が全壊し、多くの住民が犠牲となった。倒壊した家屋のほとんどは、石やレンガを積み上げ、その隙間を泥で埋めるという伝統的な工法で作られていた。こうしたことからJICAは、同年7月から開始した「ネパール地震復旧・復興プロジェクト」において、再建住宅の技術指針の作成、建築の職人や住民向けの住宅再建に関する研修開催などの支援を実施した。さらに、円借款の「緊急住宅復興事業」を通じて、地震被害を受けた住宅所有者を対象に、技術指針を満たした耐震住宅の再建に係る資金を供与した。再建にあたっては、JICAの研修を受けた地域の職人が村々を訪れ、住民に対してアドバイスを行った。こうした支援により、JICAが支援する二つ郡では、2020年4月時点で、耐震住宅の完工率が、支援対象となる約8万3,000世帯のうちの約87%に達している。

「様々な支援を通じ、災害前の防災投資が重要であるという意識が各国の関係者の間で徐々に浸透していると感じています」と松元さんは言う。「今後も、人命や資産を守るための支援に力を入れていきます」

「より良い復興」が、災害の悲劇を繰り返さない、より安全な世界へとつながっていく。