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Highlighting JAPAN

窓から見える日本

2020年春から、ブラジル、アメリカ、イギリスの「Japan House」で、窓を通して見える日本の美しさをテーマにした展覧会が開催される。

「世界を豊かにする日本」をテーマに掲げ、世界の人々に「日本」に出会ってもらう場として 2017年に始動した 「Japan House」では、これまで、サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドンの 3都市の事業拠点を巡回する様々な企画展を開催してきた。第3期目に選出されたのは、一般財団法人窓研究所による「窓から見える日本(仮)」展である。「窓」の文明としての普遍性、文化としての多様性を考察しつつ、窓と建築を通して見えてくる日本の美しさを伝えようとする企画で、2020年の春からおよそ1年をかけての巡回展となる。

所長の山本絹子さんは「窓研究所では、窓を建築の一部としてだけではなく、人間の生活や身体的行動に密接に関係しているものと捉え、様々な分野から“窓”を読み解くアプローチをしてきました。Japan Houseの巡回展は、日本発祥の”窓学”を紹介する良い機会だと思っています」と語る。

展示の総合ディレクションは、2007年の「窓学」の開設当時から監修を行ってきた、建築批評家の五十嵐太郎さんが務める。「10数年に及ぶ「窓学」の活動には、これまで国内外の大学を始めとする研究機関や有識者、アーティストに参加していただき蓄積してきた成果があります。今回はその中から、日本建築における窓の有りようを伝えられるものを選び、展示のための準備を進めています」と五十嵐さんは話す。

柱と梁で建造する日本建築は、枠組みの間を全て開口部にすることが可能で、石やれんがを積んだ壁で建造する建築とは、根本的な概念が異なる窓の構造を持つ。伝統的な日本家屋で“雨戸”や“襖”といった建具を開け放つと建物の表情が一変するのである。今回の展示では、香川県高松市、栗林公園の「掬月亭(きくげつてい)」を例に、こうした様子や、日常的に取り扱う建具の機能美を映像で見せる。

また、こうした家屋で、一般の民衆の生活がどのように営まれてきたのかを、国民的な人気漫画「サザエさん」の中に探る試みも紹介される。

その他、日本伝統の折り畳み式の立体図面である「起し絵図」で作る実寸大の茶室の模型が展示される。「茶室は、日本建築の中でかなり特異な建物です。例えば“擁翠亭(ようすいてい)”は、茶室という狭小な建物に13もの窓が設けられています。このような建築は世界に類例がありません」と五十嵐さんは言う。思い思いの位置にそれぞれ意匠を凝らした窓が巡らされた茶室には、時間の経過と共に移りゆく“外”の景色を“内”に取り入れる、日本人の自然に対する独特の感性が感じられる。

また、「窓の仕事学」と題する企画では、織物や染め物、焼き物、塩や茶といった食品の加工など、それぞれのものづくりに特化した窓の役割を見るとともに、日本各地の気候風土に根差した特産品や職人の手仕事、その歴史も併せて紹介される。

「会期中は、来場者が参加できるトークイベントなども開催したいと思っています。日常的で身近な窓をきっかけに、豊かな文化交流が生まれることを期待しています」と山本さんは語る。