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Highlighting JAPAN

スポーツで国民をひとつに

南スーダンでは、様々な民族の選手が集まる全国スポーツ大会を通じて、平和に向けた国民の結束が促進されている。

南スーダンは2011年にスーダンからの独立を果たした。しかし、2013年に大統領と副大統領(当時)の政治的な対立が民族的な対立へと発展し、武力紛争が勃発などし、情勢は安定しなかった。こうした中、南スーダン文化・青年・スポーツ省は、国民の結束、出身地域や民族の異なる若者間の交流促進を目指した全国スポーツ大会「National Unity Day」(NUD)を計画し、国際協力機構(JICA)に協力を要請した。JICAはこれに応じ、2015年からNUD開催に向けた支援を開始した。

「南スーダン独立以降、インフラ整備、教育、保健など幅広い分野で支援を行ってきたJICAに対してスポーツ省は信頼感を持っており、それが協力要請につながったのだと思います」と JICA南スーダン事務所の金森大輔さんは述べる。

スポーツ省職員はNUDのような大規模なイベント開催の経験が十分になかったことから、JICAは企画書の作成、地方政府との会合、各競技団体との連絡など事務的な作業を支援した。さらに、会場費、選手・コーチの宿泊・食事・移動などの費用のほか、国連などの国際機関、他国政府、民間企業からの資金調達活動の支援も行っている。

こうして2016年1月に全国9地域から約350名の選手が参加し、最初のNUDが首都ジュバで開催され、サッカー、短距離走やリレーなどの陸上競技が約1週間にわたって実施された。競技で使用されたグラウンドは、国連の平和維持活動のために派遣されていた自衛隊と、橋や給水施設の建設を行っていた日本の民間企業によって整備された。

その後も毎年、NUDは開催され、2019年に行われた第4回NUDでは、約320名の選手がサッカー、陸上競技、バレーボールに参加した。南スーダン唯一の全国的なスポーツ大会として回数を重ねるごとに、NUDへの知名度も高まり、今回はJICAの他、国連機関、スイス政府、民間企業など12の機関・団体から機材や資金の支援を受けた。また、大会には合計で約55,000名もの市民が観戦に訪れている。

大会中には、選手・コーチが宿泊したジュバ職業訓練センターで平和構築ワークショップ、HIV/AIDS及びジェンダーワークショップ、そしてフェアプレーワークショップが開かれている。ワークショップには、選手、コーチ、政府関係者の約400名が参加し、紛争の予防、ジェンダー差別の撤廃などをテーマに講義や議論が行われた。 

NUDは選手の意識に大きな変化をもたらしている。選手へのアンケート調査によると、大会前には多くの選手が出身地域や民族の異なる選手との交流をためらっていたが、大会後には互いに信頼し、交流できるようになったと答えている。その大きな理由としては「試合で切磋琢磨すること」と、「同じ宿舎で寝食を共にしたこと」が挙げられている。

「ほとんどの選手が、異なる民族と友達になれたことを地元に帰って広めたいと考えており、NUDが国内に平和を広めるきっかけになっていると言えます。市民も、争いもなく試合を観戦できたことに大きな意義を感じており、NUDを通じて平和への機運が高まることを歓迎しています」と金森さんは話す。

第4回NUDで好成績を残した選手は、南スーダンの代表選手としてルワンダやタンザニアなどで開催された国際大会に出場している。国際大会で活躍できれば、オリンピックに出場できる可能性が高くなる。そのため、NUDは世界を目指すアスリートにとって大事な大会にもなっている。

2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックでは、NUDをきっかけに世界へと羽ばたいた選手の活躍を見ることができるかもしれない。