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Highlighting JAPAN

 

 

つながる三陸、深まるきずな

2011年の東日本震災後5日目に運行再開し、14年には南・北の区間で全線復旧した三陸鉄道。今年3月には南北の終点である釜石―宮古間が開通し、岩手・三陸の全域が結ばれる。復旧と記憶の継承に挑む鉄道マンに伺った。

2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、東北地方の太平洋沿岸地域は壊滅的な被害を受けた。しかし岩手県の三陸鉄道(三鉄)はわずか5日後、北リアス線の陸中野田―久慈間で運行を再開した。当時被災直後の状況を調査した旅客サービス部の冨手 淳さんは「震災3日後に沿線の被害状況を確認した所、数多くの人が津波で流されなかった線路の上を歩いている光景を目撃しました。『皆さん、がれきで埋まって不通になった国道の通行を諦めて、人探しや買い出しのために歩いているに違いない。これは一刻も早く列車を走らせなければならない』と社長が即断し、無料で乗車できる震災復興支援列車として運行したのです」と話す。その後、三鉄社員の決死の努力や、三鉄が宮古市長へ要請して取り付けた自衛隊の協力も奏功し、運転再開区間は徐々に伸びていった。当面の生活をどう立て直すかで精一杯だった三陸の人々の目に、少しずつ運行距離を伸ばしていく三鉄は、震災前の生活を取り戻す希望の光のように映っただろう。

2013年には三鉄沿線を舞台にしたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」人気が後押しして観光客が増え、2014年4月には南・北リアス線共に全線が復旧した。そして今年の早春には更に嬉しいニュースが届く予定である。「震災後、南北のリアス線を結んでいたJR山田線は津波で全線不通になっていましたが、JRによる復旧工事完了後、当社に移管されます。3月23日には大船渡市の盛から釜石、宮古、久慈までの163キロが結ばれ、『三陸鉄道リアス線』として再出発します」と冨手さんは力を込める。

この朗報の一方、三鉄は、震災で得た経験と教訓を後世に継承し、自然災害が多い日本の防災に活かそうとする取組も進めている。企画した旅客営業部の二橋 守さんが説明する。「それが2012年6月にスタートした、主に小学生~高校生を対象にした貸切車両『震災学習列車』です。当時の写真や被災状況が見える場所の徐行運転によって、震災当時の様子、現在の復興状況などを説明するほか、将来の課題を子供たちと一緒に考える時間も設けています。ガイドを務めるのは当社社員や地元住民です。被災者全てに言えることですが、震災発生時に当人が置かれていた状況や受けた被害の内容、価値観などによって、震災の受け止め方、何を課題とすべきかなどの考え方は異なるものです。したがってガイドによって着眼点や説明の内容は微妙に違うのですが、私は、いずれもありのままに届けることに意義があると思っています」。ただし、全ガイドに共通していることがあると二橋さんは続ける。「最後には現在の復旧に至るまでに国内外のおびただしい数の人々の協力があることや、友人、家族とのきずなの大切さ、防災意識を高めつつ、力強く将来を生き抜いてほしいというメッセージを伝えることです」。震災学習列車は南・北リアス線を結ぶ新区間でも運行予定である。「新区間は同じ三陸でも地形や被害内容、復興状況が異なります。入念に調査し、震災学習を拡充したいと考えています」と二橋さんは結んだ。