Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan January 2019 > 暮らしやすい日本をつくる、NPO・NGO

Highlighting JAPAN

 

 

子供が売られない世界を目指して

認定NPO法人かものはしプロジェクトはアジアで子供たちが性的目的での人身売買に遭い、被害を受ける問題の解決を目指して2002年に設立された。現地行政や司法と連携し、カンボジアとインドで問題解決に挑戦している。

認定NPO法人かものはしプロジェクトの共同代表である村田早耶香さんは大学生の時、カンボジアの売春宿から保護された子供達と被害者保護施設で出会った。被害者としての幼女が何人もいるのを見て「こんな非人道的なことが絶対あってはならない」との強い思いを抱いた。子供たちは深刻な貧困状態にある農村部の家庭に生まれ、親の借金の形に売られ、売春宿に連れてこられたのだ。そんな18歳未満の子供たち、中には幼女まで性的に売買されることで当時のカンボジアはひどい状況にあった。

村田さんは2002年に共同代表2名と団体を設立、カンボジアでの問題解決を目指しし、「売らせない活動」として、次に子供が売られる危険度が高い農村部の最貧困家庭の姉妹や母親である女に向けて雑貨を作るファクトリーでの雇用を提供しながら、その兄弟や子供に教育の機会を与えるという生活自立支援を行った。そして「買わせない活動」として、既に国際機関やNGOが行っていた、現地警察へ意識・技術向上のための訓練支援を行い、引き継いでいった。

国際機関・NGO・カンボジア政府の人身売買に関する様々な取組が実り、2010年までの9年間で性犯罪者の逮捕件数は9倍に増加した。犯罪抑止力の強化に加え、カンボジアの発展による経済成長も後押しした結果、売春宿に従事する18歳未満の割合は、2000年前後の約30%から2015年には2.2%(15歳以下は0.1%)へと大幅に減少した。「ようやくその景色を見ることができました。色々な人たちの努力が集結すると大きな社会問題も本当に解決するのだと、実感しています。」と村田さんは振り返る。この活動は2006年に英フィナンシャル・タイムズ紙に取り上げられ、2007年には国際青年会議所から「傑出した若者賞」を授与されている。

カンボジア事業を新法人として独立させた今、かものはしプロジェクトが集中するのはインド事業である。現在、インドでは貧しい地方の州出身者の子供が仲介人にだまされ、経済発展の進む大都市で売られるケースが多い。かものはしプロジェクトは、インドでは州によって法律や自治、言語や文化宗教も違うことから州同士の連携が弱かったことに着目し、インドのNGOへの支援を通じて、州をまたいだ行政や警察、NGOの連携へと働きかけた。2017年度は1年間に延べ359名の被害者へ精神的ケアや社会復帰のための支援を提供した。

「児童労働の中でも最悪の形態」である性的目的での子供の人身売買とは、社会があまり光を当てて欲しくない部分であるゆえに、解決しようとする活動には抵抗も起こる。だがNPOという立場は「発想にしがらみがなく、人権問題へストレートに対応する機動力が高いのです」と村田さんは語る。「子供が売られる問題をなくす」との熱意から始まったこの団体は難しい問題にチャレンジし、「我々の活動が必要なくなる世界を実現したい」と願っている。