Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan December 2018 > ローカル列車の旅

Highlighting JAPAN

 

釧路湿原をゆっくりと走りながら森と水の雄大な調和を味わうトロッコ列車

「くしろ湿原ノロッコ号」は、春から秋にかけて北海道の「釧路湿原」をのんびりと走行しながら、その“森と水の楽園”とも呼ばれる大自然を堪能できる人気列車だ。

「釧路湿原に沈む日本一の夕日を見ませんか」をキャッチフレーズに、1989年6月、くしろ湿原ノロッコ号は釧路駅~塘路駅間(約27km)で運転を開始した。自由席車両1両を含む4両編成の観光トロッコ列車で、現在は毎年4月から10月初旬まで、片道約1時間をかけて、一日1往復ないし2往復運行する。「ノロッコ」の名の通り、時には10km/h以下のゆっくりした速度で、幾つものビューポイントを楽しめるのが魅力だ。列車でしか立ち入ることができないエリアも楽しめ、国内湿地面積の約6割を占めるという広大な国立公園「釧路湿原」をなぞるように横切り、キタキツネやタンチョウヅル、エゾシカなどの野生動物に出会えることもあるという。

車両内は、古さや懐かしさを感じさせるデザインで、2号車にある車内販売スペースには、北海道産の食材をふんだんに使用したランチボックス(予定)や、「食べる牛乳」をコンセプトに作られた「くしろ湿原ノロッコ号プリン」などが販売される。指定席車両で釧路湿原を見渡せる側は6人掛けのテーブル席となっており、釧路駅を発車後、国道に沿って走ると間もなく、密集するヤチハンノキが目の前を流れていき、やがて釧路湿原が現れる。

観光ガイドのアナウンスに耳を傾けつつ、車外のパノラマを眺めていると、釧路湿原駅の手前辺りで、列車が最初の徐行を始めた。第一のビューポイントとなる「岩保木水門(いわぼっきすいもん)」が進行方向左手に姿を見せる。湿原と青空を分ける地平線に溶け込む水門はまさに絶景で、やがてその車窓いっぱいに、蛇行する釧路川が映る。釧路湿原駅から細岡駅を経てほどなく、列車はまた徐行する。第二のビューポイント、線路と釧路川が最も接近する地点である。滑らかなカーブを描く釧路川は悠然とした景観で、この日はカヌー下りを楽しむ観光客を確認することができた。カヌーを楽しむ人たちと列車の乗客が手を振り合う。心が癒される、のどかで微笑ましい光景である。

終点の塘路駅で下車し、塘路湖の湖畔まで軽いトレッキングを楽しむのも良い。夏なら塘路湖からカヌーで釧路川を下り、細岡駅まで戻るプランも定番の一つである。釧路湿原駅で途中下車して、湿原の雄大な風景と、その後方にそびえる阿寒山系の雌阿寒岳や雄阿寒岳を同時に望める「細岡展望台」に立ち寄ってみるのもおすすめである。

冬季にはC11型SLが牽引する「SL冬の湿原号」の運行が行われることがあるので、JR北海道のホームページをチェックしておくと良いだろう。北海道、釧路ならではの幻想的な白銀の世界を、レトロな蒸気機関車と一緒に体感してみるのも、また一興かもしれない。