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Highlighting JAPAN

 

プロレスで日本と海外の橋渡しを

日本での生活は35年超。多種多様な企業で実績を重ねたハロルド・ジョージ・メイさんが次なる挑戦の場に選んだのはプロレスだった。夢は日本固有の文化になり得るプロレスで、世界と日本をつなぐことだ。

父親が日本企業に招へいされたことで、オランダ人のメイさんが初めて日本の土を踏んだのは8歳の時だった。その後、中学・高校とインドネシア、大学からはアメリカで過ごしたが「働く場所は日本と決めていました。例え英語が苦手でも、道に迷っている人をそこまで連れて行き、最後まで責任を持つホスピタリティや、同じ紫色でも「古代紫」「茄子紺」「京紫」「菖蒲色」等と多彩なネーミングを付ける研ぎ澄まされた美的感覚など、様々な点に感心していたからです。一方で私は海外経験も豊富だったので、西洋と東洋の橋渡し役を務められるのではと考えました」

メイさんは飲料、消費財、玩具などのメーカーで販売、マーケティングに従事し、各社で大きな実績を残した。「海外のビジネスシーンではボスが右と言ったら皆が右を向く。しかし日本ではボスと言えども現場の意見を尊重して『和』を重んじます。正直やりづらさもありますが、半面、納得を得られれば強力な一枚岩になれます。時間に正確で律儀、中途半端を良しとせず徹底的にやり抜く国民性を武器に大きなパワーを備える集団に変貌する。これこそが日本のビジネスでやりがいを感じる部分です」と話す。

そんなメイさんが次なる挑戦の場に選んだのが、プロレスである。2018年6月に新日本プロレスリングの代表取締役社長兼CEOに就任した。「少年時代、プロレスのTV放送は言語の障壁なく、シンプルに楽しめるエンターテイメントでした。また、数年前から再び熱心なファンとして新日本プロレスの試合会場で声援を送ってきました。好きな領域でビジネスができること、これまで扱ってきた多様な『モノ』からプロレスラーという『者』を活かす仕事に魅力を感じ、お引き受けしたのです」

プロレスは、寿司や富士山、歌舞伎など固有の日本文化に肩を並べる可能性があるとメイさんは力を込める。「しかも、ただ観るのではなく『体験できる』ことがストロングポイントです。技を繰り出すたびに客席の空気までも震わせるレスラーの迫力に観客は驚き、ひいきの選手に大声援を送る。勝てば拍手を惜しまず、相手の反則に怒り、負ければ悔し泣き、哀しむ…まさに『体験』なのです」

そうした強みを持つプロレスを世界に広めたい――そこでメイさんが重視するのがインバウンドである。「当社の動画配信サービスの会員数10万人超のうち5割は外国人。海外会員が訪日した際に新日本プロレスの試合会場を訪れ、SNSで内容を拡散してくれます。また、より深く試合に入り込んでいただけるようにYouTubeを強化しました。相手選手との因縁やトレーニングの経過、感情的でありながら的確な実況中継を行う日本のアナウンサーの『匠の技』を、英語で極力再現した試合中継動画などを配信しています」

「眠っている宝石」ともいえるプロレスを活用して日本と世界をつなぎたい、とメイさんは意気込む。訪日客の関心がモノからコト消費へ広がる中、プロレスもその一翼を担っていくだろう。