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Highlighting JAPAN

 

日本の原風景・里山とトレッキングが融合

「信越トレイル」は新潟と長野の県境に延びる約80kmのトレッキングコース。魅力は山歩きだけにとどまらず、日本特有の文化や多様な自然が残る「里山」も体験できる。

日本は国土の約4分の3が山地であり、数多くの名峰が存在する。そのため「山歩き」といえば、従来は山頂を目指すピークハントがほとんどだった。しかし近年の健康ブームの広がりを受け、登山に加えて、負荷が比較的低いトレイルを歩く旅の人気も高まっている。

NPO法人日本ロングトレイル協会に加盟しているロングトレイルは現在16ヵ所。中でも「信越トレイル」は草分け的な存在である。「信越トレイルは長野と新潟の県境である標高約1,000mの関田(せきだ)山脈の尾根沿いに走る約80kmの縦走路です。1996年に調査を始め、2008年9月に全線整備が完了しました。元々の登山道や林業関係者が使う作業道、戦国時代から残る古道などを中心に、一部を新規に開拓してつないでいます」とNPO法人信越トレイルクラブの高野賢一事務局長は話す。

トレイルはセクション1~6に分かれており、いずれも比較的車道に近い場所があるため、車でアプローチすることもできる。コース沿いにはトレイルクラブに加盟している計60の宿泊施設があり、その宿に泊まれば登山口・下山口への送迎が付く。16ヵ所の峠道を含めて多くの道路が交差し、様々な地点から経験や体力に応じたスタート、ゴールを設定できるため、初心者から上級者まで幅広い人が楽しめる。

年間約3万8,000人が訪れるが、ここ数年外国人の割合も増加、その多くはロングトレイルに親しんだ文化を持つ北米、ヨーロッパ、オセアニアなどが中心である。彼らの目に映るこの地の魅力は、海外では珍しい多様性のある自然や動植物、そしてトレイルに近接している日本特有の里山文化だという。「トレッキングに適した時期は5月中旬から10月下旬頃で、春から初夏にかけては残雪と新緑、一斉に花咲く山野草、そして日本有数の鮮やかなブナの森、さらに秋の紅葉など日本特有の四季を体感していただけます。また、トレイルは里山を巡るため、トレッキングの後は麓の集落で温泉や郷土料理、伝統工芸体験、寺町巡りなどを楽しむことができます。」と高野事務局長は言う。

事務局は、トレイル設立趣旨への共感が外国人の来訪する一因になっていることをうれしく思っている。「私たちはトレイルが走る2県9市町村の地域が一つになり、埋もれかけていた地元の価値を再発見して自分たちの土地に誇りをもってほしいという願いを込めて取り組んでいます。外国人の皆さんの中にはこうした考えに関心や理解を示し、それを実践している場所に訪れることを目的にされる方も多いのです」と高野事務局長は言う。

高野事務局長は信越トレイルのような取組は、一層広がっていくのではと話す。里山に近接するトレイルへの国際的な評価はさらに高まりそうである。