Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan April 2018 > 海洋国家日本:海と日本人

Highlighting JAPAN

 

海洋政策の推進


海に囲まれた日本は、海を守り、海を活かしてきた。日本の海洋環境が変化する中で2007年に海洋基本法が施行され2008年3月に基本計画が取りまとめられた。それから10年を経て取りまとめられる第3期海洋基本計画について、羽尾一郎内閣府総合海洋政策推進事務局長にお話を伺った。

海洋基本法の施行から10年が経ちました。海洋基本法の背景と目的を教えてください。

海洋基本法設立時の背景として、食料、資源・エネルギーの確保や物資の輸送、地球環境の維持等、海が果たす役割の増大や、海洋環境の汚染、水産資源の減少、海洋権益の確保に影響を及ぼしかねない事案の発生等、様々な海の問題が顕在化していたことが挙げられます。海洋基本法は、海洋に関して基本理念を定め、海洋基本計画の策定など海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部を設置することにより、関係各府省が進めている海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。

私の属する内閣府総合海洋政策推進事務局は、こういった事項を政府内でとりまとめ、強力に推進する観点から設けられたものです。

この10年間の海洋政策のポイントを教えてください。

2013年に取りまとめられた第2期海洋基本計画では、海洋立国日本の目指すべき姿として「国際協調と国際社会への貢献」「海洋の開発・利用による富と繁栄」「「海に守られた国」から「海を守る国へ」」「未踏のフロンティアへの挑戦」を掲げました。

この10年の間に、我が国の領土の約半分に及ぶ広大な海域を新たに我が国の大陸棚とする大陸棚の延長申請の取りまとめや、「海賊対処法」「低潮線保全法」「有人国境離島法」の成立など、海洋分野において施策を着実に推進してきました。

2018年春に策定される予定の第3期海洋基本計画に向けて、2017年12月に総合海洋政策本部参与会議がまとめた第3期海洋基本計画への意見書のポイントを教えてください。

意見書においては、第2期海洋基本計画の実施状況等に関する評価を踏まえ、最近の海洋における情勢の変化を勘案して第3期海洋基本計画の策定を行うべきと提言しています。特に、昨今の我が国周辺海域をめぐる環境の変容や脅威の発生の状況、「法の支配」に基づく「開かれ安定した海洋」の実現を目指して行っている取組の状況等を十分に勘案することが必要となっており、これまでの海洋基本計画の在り方を抜本的に再構成し、海洋の安全保障を幅広く捉え、国民の安全と安心の確保、我が国海洋権益の確保等に積極的かつ強力に取り組むべき新たな指針としての計画とすべきことを提言しています。

また、エネルギー・資源の安定供給の確保のための海洋資源の開発や洋上風力発電の導入拡大に向けた取組、国際的な枠組を活かした海洋環境の保全や沿岸域の総合的管理の推進、海洋立国を支える人材の確保・育成等を始めとして、科学的知見の充実、国際連携・国際協力、北極政策等を含め、今後、5年間の計画期間において強力に取り組むべき施策を取り上げた計画とすべきことについても提言しています。

さらに、海洋基本計画に掲げた施策を効果的・効率的に実施するため、PDCAサイクル、すなわち、工程管理に基づく実施とその状況の検証・評価、工程の見直し等を着実に行うプロセスを強化するとともに、国民の理解に資する分かりやすい記述とすることに留意すべきと提言しています。

この意見書を踏まえて、政府において第3期海洋基本計画の策定に向けた検討を進めています。

海洋基本計画の推進には国際協調も重要と思われます。そのポイントについて教えてください。

海の世界には、長年にわたって多くの国が議論と実践を積み重ねてきた、海洋法に関する国際連合条約を中心とした国際ルールが存在します。このルールをしっかりと守ること、海における「法の支配」を確立するということが、まず一つ目のキーワードです。国際協調を通じて、ルールに基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することは、平和で安定した国際社会の確立につながります。

一方、地球温暖化を始めとする地球規模の様々な海洋問題は、まだ因果関係も分からないことが多いため、海洋の状況を適切に把握し、海洋の諸現象をよりよく理解することが欠かせません。国際的な協調や連携の下、包括的な海洋観測網の構築に我が国も積極的に貢献するとともに、これらの観測を通じて科学的知見を得るように努め、それに基づき合理的に決定される政策を実施していくことが重要です。これがもう一つのキーワード「科学的知見に基づく政策の実施」です。

これら二つのキーワードを、日本だけでなく国際社会全体の普遍的な基準として浸透させることが海洋基本計画においても重要なテーマになると考えています。