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Highlighting JAPAN

十和田八幡平の四季を通じた喜び

豊かな森、清らかな渓流、滝や湖。自然に恵まれた十和田八幡平国立公園の紅葉は格別に美しい。秋に限らず、年間を通して雄大な自然を満喫でき、温泉に浸かることもまた、この公園の楽しみの一つである。

十和田八幡平国立公園は、本州北部の山岳地帯にある山と湖と渓流の公園で、十和田湖、奥入瀬渓流、峰が連なる八甲田山系などからなる十和田・八甲田地域、そして八幡平、秋田駒ヶ岳、岩手山などからなる八幡平地域で構成される。この公園は日本国内で有数の火山地帯にあり、火山現象と冬季の多雪条件が長い時間をかけて作り上げた、変化に富む地形と多様な生態系が魅力である。

この公園で特に有名な十和田湖は、約20万年前に始まった火山活動により形成された二重カルデラ湖で、外輪山を覆う緑が原生的な景観を作り出し、春から夏にかけては雲海、秋は紅葉、冬は雪と氷に覆われ、一年を通じて楽しむことができる。また、湖畔に建つ「乙女の像」は、日本を代表する彫刻家にして詩人である高村光太郎(1883-1958年)の手によるもので、湖畔の少し奥まった場所にあるにもかかわらず、十和田湖の象徴としての知名度の高さから観光客が多く訪れる。

豊かな水量の湖から流れ出る奥入瀬川が作った約14キロメートルに及ぶ渓谷は、十和田湖と共に国の特別名勝及び天然記念物に指定された日本屈指の景勝地である。特に、一帯が落葉広葉樹の宝庫であることから、芽吹きの春、緑生い茂る初夏は勿論、紅葉シーズンの美しさは比類ない。渓流沿いに遊歩道が整備され、それぞれ変化に富んだ滝が点在し、苔に覆われた奇岩、見事な巨木林を眺めながら散策することが出来る。

渓谷沿いの国道も樹々に覆われた絶景コースで、それを北上すると、そそり立つ八甲田の山並みが見渡せる。冬には樹氷に囲まれる睡蓮沼や90度を超える熱湯が湧き出る地獄沼など、多様な沼が点在している。

八甲田山系は、1,585mの大岳を最高峰とする、高田大岳、赤倉岳、さらにその南側に連座する櫛ヶ峰、駒ヶ峰、乗鞍岳、横岳などの火山群の総称である。登山道が整備されており、通年運行されているロープウェーからは、春から夏には緑の絨毯、秋には日々変化する紅い絨毯を敷き詰めたようなパノラマビューを楽しむことができる。

八甲田山系では、自然林、山稜部の高山植物、さらに湿原があり、様々な表情を見せる。紅葉後の冬季には、山岳スキーや樹氷、新春には豪雪地帯ならではの5メートルを超える雪の壁など、優しくも雄大な景観に溢れている。

また、この山麓には城ヶ倉、酸ヶ湯、猿倉、谷地、蔦などの温泉が点在し、湯治利用が盛んである。手負いの鹿が傷を癒した、猿が浸かっていたなど、温泉発見にまつわる様々な伝説が興味をそそるだけでなく、伝統的な木造建物の宿自体もまた趣がある。

なかでも江戸期より湯治客が多く訪れてきた酸ヶ湯温泉旅館は、ブナの木に囲まれた標高約900メートルの高地にある。この温泉の総ヒバ造りの巨大な「ヒバ千人浴場」は特に有名で、160畳もの浴室には源泉が異なる浴槽が4つあり、宿泊でなくとも「日帰り入浴」が出来る。

十和田八幡平国立公園は、こうした様々な楽しみが四季を通じて観光客を惹き付けてやまない。