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Highlighting JAPAN

SDGsは企業にとって攻めであり、守りである

SDGsに示された世界共通課題の解決は、グローバルに展開する企業の事業拡大にもつながる。

1990年代以降、グローバル化が急速に進んだ一方で、その負の側面も大きくなった。特に、大量の森林伐採や児童労働など、もはや国家や国際機関の力だけでは解決できない多くの課題が顕著になってきた。

2000年に発足した「国連グローバル・コンパクト」(UNGC)は、国連と企業が協力してそのような問題の解決を目指した、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みで、現在、世界約160カ国、1万3000を超える企業や団体が同意、署名している。

2003年、UNGCに呼応し日本におけるローカルネットワークとして発足したのがグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)だ。その代表理事であり、UNGCのボードメンバーでもある有馬利男さんは、日本企業にとっても今後、SDGsはますます重要になると語る。

「2007年頃まで日本におけるUNGCの署名企業や団体は60数社にとどまり、経営トップの関心も欧米や中国、韓国に比べてかなり低い状況にあったと思います。しかし、“企業は社会のためにある”といった信念を持つ経営者たちが主導することで、日本でも社会的な責任を本業そのものの中で追求すべしとの議論が高まってきました。今後、日本企業もSDGsへの取り組みを加速させることが必要です」

2015年までに達成すべき目標を掲げたMDGsは、どちらかと言えば途上国に限られた共通課題に対する開発目標であり、企業での取組みは容易ではなかった。しかし、2015年に採択されたSDGsは、先進国も取り組みやすい目標やターゲットであり、企業単体でも貢献しやすくなったのである。

UNGCが定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)の10原則は基本的な価値観であり、SDGsはこうした価値観を具体的にしながら解決すべき課題を示したものだ。

有馬さんは「企業にとってSDGsは攻めであり、守りである」と言う。

「現在、日本企業は“ルールを侵さない”といった守りの姿勢が強いと感じています。企業がグローバルに展開する場合、例えば途上国に工場を作り現地の取引先企業と仕事をするわけですが、その際に問題が発生しないようガバナンスを固めます。これは、いわば“守り”の体制固めであり、結果的にSDGsの17のゴールにもつながるのですが、一方、“守り”を“攻め”のビジネスチャンスとして積極的に捉えていく必要が日本企業にはあると思います」

SDGsが進展する中、投資側もSDGsに強い関心を持ち、企業のSDGs対応を評価基準に取り込んでいるからである。世界の多くの企業は、SDGsを契機として、世界共通課題解決への取組みはビジネスチャンスになると捉えている。

「新しい市場開拓など、企業の成長機会の追求がSDGsの課題とピタッとあっていれば理想的です。GCNJではテーマ別に分科会を開催し、SDGsについて議論や情報交換を行っています。また、セミナーやフォーラムを開催し、専門家の方々を交えてSDGsタスクフォースを立ち上げ、SDGsをどのように企業の中で活かしていくか、日本としてどのようなメッセージを出すかといった議論をし、メディアを通じてメッセージを発信することにも取り組んでいます」と有馬さんは語る。

企業が社会に貢献しながら収益も上げるためには、知恵を出さなければならない。例えばリサイクルのコストを下げ、いかに収益を出すかといった課題を乗り越えるためには、工夫の積み重ねが必要だ。

有馬さんは、この点について次のように語る。

「社会的なニーズと収益の矛盾を乗り越えていくことで社会は進歩していきます。GCNJとしての今後の課題のひとつは、よりネットワークを広げていくことです。現在のネットワークは都市部に限られ、東京と大阪の大企業が8割余りを占めています。全国に拡大することでさらに中小企業の参加も期待できます」

有馬さんが最後に指摘した課題は、SDGsがビジネスチャンスであることを分かりやすく伝えるために、様々な分析を進める必要性である。

国内企業へのさらなる呼びかけと強いメッセージの発信が日本のSDGs進展を支えるカギとなる。