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街のエネルギーをスマートに管理

千葉県の「柏の葉スマートシティ」では、最新技術と住民の良識とを組み合わせることで、省エネルギー、二酸化炭素(CO2)排出削減を実現している。

千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」の開発は、「環境共生都市」、「健康長寿都市」、「新産業創造都市」という3つのテーマのもとに、2000年から始まった。現在、全体の3分の1の開発が終了し、約5000人が暮らしている。2023年までに、約300haの敷地に26,000人が暮らす街となる予定だ。

柏の葉スマートシティでは、環境共生都市としての取り組みの一つとして、「エリアエネルギー管理システム」(AEMS)が導入されている。これは、「柏の葉スマートセンター」を中央管理拠点として、エリア一帯に分散する商業施設、ホテル、オフィス、マンションなどの各施設と、電力会社からの系統電力、および、エリア内の太陽光発電や蓄電池などの電源設備をネットワークで結び、地域で使われるエネルギーを一元管理するシステムだ。

「各施設のエネルギー使用状況や気象情報などのデータを分析することで、街全体で効率的なエネルギーの使用が可能になります」と三井不動産柏の葉街づくり推進部の近澤誠氏は言う。「それが省エネルギーとCO2排出削減につながります」

AMESに加えて、地域のエネルギー運用を効率化するために必要なのがスマートグリッドだ。スマートグリッドは太陽光発電や蓄電池などエリア内の各施設に設置された施設で創エネ・蓄エネされる電力を施設間で融通する。電力需要は、天候や曜日によって大きく変化する。例えば、平日は需要の低い商業施設から需要の高いオフィスに電気を供給、休日はその逆を行う。これらの取り組みで、地域レベルで約26%の「ピークカット」を実現している。

また、各住居には「ホームエネルギー管理システム」(HEMS)も設置されている。これは、専用のタブレット端末のほか、パソコンやスマートフォンで、自宅の電気・水・給湯の使用量、電気代、そして街全体の電気の使用量も確認することができるシステムだ。さらに、AI(人工知能)機能により、各居住者の生活パターンに応じて快適さを損なわずに省エネを実現するための具体的なアドバイスも、端末を通じて受けることが可能である。また、居住者には省エネによるCO2排出量の削減分に応じて、お金の代わりとして、地域のイベント参加や買物に使える「柏の葉ポイント」が付与される。

「エネルギーを『見える化』することで、居住者の省エネ意識を高めることができます」と近澤氏は言う。

商業施設、オフィス、ホテルなどの施設では、太陽光、風力、地中熱などの自然エネルギー、生ゴミを使ったバイオマス発電などの設備のほかに、エネルギー使用を抑えるための様々な工夫も行われている。例えば、建物の温度の上昇を防ぐ屋上緑化や壁面緑化や、消費電力の少ないLED照明が導入されている。また、室内照明の使用時間を抑えるために、外光を室内に導く「光ダクト」も設置されている。これらの工夫とAMESの組み合わせで、店舗とオフィスが入ったビルでは、同サイズの通常のビルと比較して、約50%のCO2排出削減を達成している。

今後、柏の葉スマートシティでは、AMESのさらなる高度化、太陽光発電のさらなる導入などの取り組みで、2030年には、従来の街作りを進めた場合と比べてCO2排出量を約60%削減することを目指している。

柏の葉スマートシティでの取り組みは様々なメディアに取り上げられ、国内外の注目を集めている。視察者は年間3000人、その約2割は海外からである。

「特に、AEMSに対する皆様の関心は非常に高いです」と近澤氏は言う。「エネルギーを地域単位で賢く使う仕組みが世界に広がれば、世界全体のエネルギー需要を下げることにもつながっていくでしょう」