Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan August 2016 > オリンピック・パラリンピックで活きる日本の知恵

Highlighting JAPAN

スポーツを支えるボランティア

2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックでは約8万人のボランティアが活躍することが期待されている。

日本では全国各地で、マラソン大会やトライアスロンなど大規模なスポーツイベントが頻繁に開催されている。そうしたイベントを支えるために、多くのボランティアが必要とされている。例えばマラソンの場合、ランナーの持ち物の受け渡し、給水、歩行者や車の交通整理などをボランティアが行っている。

「日本のスポーツボランティア活動にとって、大きな契機となったのが2007年に始まった東京マラソンです」と笹川スポーツ財団(SSF)専務理事で、日本スポーツボランティアネットワーク(JSVN)副理事長も務める渡邉一利氏は言う。「スポーツはする、見るだけではなく、支えるということが広く知られるようになったのです」

東京マラソンは約1万人のボランティアが3万4千人のランナーをサポートしている。東京マラソン以前には、1日にこれほど多くのボランティアが活躍するスポーツイベントは日本ではほとんどみられなかった。今や、東京マラソンのボランティアは、募集が始まるとすぐに定員に達してしまうほどの人気になっている。

SSFが全国20歳以上の男女2000人を対象に2年毎に行っている調査によると、ここ20年、スポーツボランティアを行ったことがあると回答した人は全体の7〜8%で推移している。しかし、これとは別に、子どもが参加しているスポーツ活動の支援、地域のスポーツ行事の準備などに携わったことがあると回答した人は、2014年調査では約16%にのぼる。

「こうした人々は、スポーツボランティアを行っているという意識のない『無自覚ボランティア』です」と渡邉氏は言う。「そうした方々に、いかにスポーツボランティアという意識を持って活動していただけるようにするかも、今後大切だと思っています」

今、そうしたスポーツボランティアの普及に追い風となっているのが、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックだ。内閣府が2015年に行った世論調査によると、2020年の東京大会にボランティアとして「参加したい」とする人の割合は22.7%となっている。

日本スポーツボランティアネットワークは、スポーツボランティアに関する知識、コミュニケーションスキルの技術などを学ぶ「スポーツボランティア養成プログラム」を実施しており、過去4年間で約2000人が参加している。オリンピック・パラリンピック開催決定の影響で、今後4年間にはその10倍近い人数が参加すると予測している。

2012年のロンドン・オリンピック・パラリンピックでは約7万人が参加しており、東京大会でも世界各国から約8万人のボランティアが参加する計画である。 それらのボランティアに多くの大学生が参加すると見られている。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は国内約780の大学と協定を結び、2020年の大会に向けて、オリンピック・パラリンピックに関する授業の実施やシンポジウムの開催などの活動を行っている。

さらに、CSRの一環として、社員のスポーツボランティアへの参加を奨励する企業も増えてきている。SSFの統計によると、日本でスポーツボランティアを行っている人は40〜50歳代がもっとも多い。ボランティア活動に費やす時間的な余裕ができる世代であることが理由と考えられる。2020年の大会で、多くの企業が社員のボランティア参加を認めるようになれば、今後一層、働き世代からの参加が期待できる。

「私は、8万人のボランティアを集めることは問題なくできると考えています」と渡邉氏は言う。「しかし、スポーツボランティアの活動は2020年の大会だけで終わるわけではありません。2020年のレガシーとして2020年以降に、スポーツボランティア文化を日本に根付かせることが大切です」