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Highlighting JAPAN

 

2020年のレガシー


日本は今、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックを目標に、経済の活性化や最先端の科学技術の開発など様々な挑戦を行っている。東京大会に向けて日本はどのように変わっていくかについて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の経済・テクノロジー委員会委員長の大田弘子政策研究大学院大学教授に話を聞いた。

2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックで日本は、経済や技術の面で、どのようなことを目指しているのでしょうか。

2020年のオリンピック・パラリンピックは、1964年の東京オリンピックに続き、夏の大会としては日本で2回目の開催となります。1964年の東京オリンピックは、日本が第二次世界大戦後の荒廃から立ち直り、高度経済成長する中で開催されました。この年、東京と大阪を結ぶ東海道新幹線が開通し、東京都心を走る首都高速道路などの道路網も広がり、東京の都市機能は発展していきました。オリンピックは日本の経済や技術をさらに飛躍させる大きな契機となったのです。

日本は今、少子高齢化など様々な課題に直面しています。2020年のオリンピック・パラリンピックは、そうした課題を解決する高性能の経済や技術を発展させるマイルストーンとなることを目指しています。そうした経済や技術は、日本だけではなく、世界がステップアップすることにもつながると考えています。

大田先生が委員長を務める経済・テクノロジー委員会ではどのような議論が行われていますか。

経済・テクノロジー委員会では、大学教授、弁護士、企業の役員など様々な専門家に参加いただき、経済・テクノロジーの分野において、2020年以降にも残る大会のレガシーとして何を構築すべきか、また、そのために2020年までに何をすべきかを議論しています。経済・テクノロジー委員会がテーマとして掲げているのが「ジャパンブランドの復権」です。ジャパンブランドの復権とは、多様な発想を受け入れながら、信頼性が高く、高付加価値の製品やサービスを生み出すということです。それは、例えば、誰にとっても不自由のない移動やコミュニケーション、多くの人との感動の共有、高信頼・高品質の安全の確保などを可能にするものです。

具体的には、どのような技術の実現を目指しているのでしょうか。

オリンピックには海外から数多くのお客様が来日されることが予想されています。そうした方たちが言葉で不自由をしないように、多言語コミュニケーションの技術開発が行われています。例えば、スマートフォンでダウンロードができる翻訳アプリケーション、空港や会場に設置される多言語コミュニケーションが可能なロボットなどです。

環境技術として、水素技術の開発も進んでいます。選手や観客の輸送手段として水素バスを導入することや、選手村で使われる電力に水素エネルギーを活用することなどが検討されています。

映像技術の開発も進められています。例えば、4Kや8Kといった、現在のテレビよりもはるかに解像度の高い映像を可能にする技術、あるいは仮想現実(VR)技術によって臨場感あふれる映像を作り出す技術の実現が目指されています。

また、近年、テロリズムは世界で深刻化しています。サイバーテロを含め、テロリズムを防ぐセキュリティ技術も今後、進化していくでしょう。

2020年に向けた準備状況はいかがでしょうか。

2020年に向けた準備状況は国際オリンピック委員会(IOC)から高い評価を受けています。準備は順調に進んでいると言えます。これからは、いかに日本全国でオリンピック・パラリンピックに対する関心を盛り上げていくかが大切です。アスリートだけではなく、多くの市民、特に若い人が参加する大会にしなければなりません。

現在、日本は大きく変化しており、将来の見通しが効きにくい状況にあります。そのため、漠然とした不安を抱える人も多いです。そうした中で、オリンピックが、日本の新しい地平を切り開くきっかけとなって欲しいです。1964年に開催された東京オリンピックは、まさしくそうしたオリンピックでした。2020年のオリンピック・パラリンピックを、1964年のオリンピックと同様に、若い世代に大きな自信をもたらすような大会にしたいです。そして、世界の多くの人に、新しい日本を見に来て頂き、日本人の温かいホスピタリティとともに、競技の感動を共有いただきたいです。