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Highlighting JAPAN

東北復興のビジョンとは

東日本大震災発生から5年を迎えた東北の被災地はどこまで復旧したのか、また今後の課題とは何か。東日本大震災からの復興を目的として設置された復興庁の岡本全勝(おかもと・まさかつ)事務次官に話をうかがった。

被災地のこれまでと現状についてお聞かせいただけますか。

まず、これまでの諸外国からの支援に感謝を申し上げます。この5年間で復興は急速に進み、インフラはほぼ復旧、住宅も被災者の自主再建や公営住宅ともに、どんどん完成しています。岩手、宮城県の地震津波被災地では、あと3年で住宅の再建が完了します。産業も復旧し、電子部品や自動車部品などの生産も元に戻ることができました。

福島の状況はいかがでしょうか。海外の人は、依然として原子力事故の影響があるのではないかと考えている人が多いようです。

原発事故の影響が残っているのは、原発周辺の約1000平方キロメートルです。面積で福島県全体のわずか7%であり、ほかの地域では安全安心に生活が営まれています。原子炉は冷温停止し、安全に管理されています。放射性物質も放出されていません。ぜひ、皆さんにこの状況を知っていただきたいと思います。

フクシマが、原発事故で危険なイメージを持たれていることは残念に思います。影響が残っているのはごくわずかな地域で、着実に除染も進められ、線量も減衰してきています。現在、福島県内の空間線量率は、海外主要都市とほぼ同水準です。また、農産物は、科学的根拠によって設定された世界で最も厳しいレベルの基準値に基づく放射性検査を行い、安全を確認した品物しか市場に出荷していません。なお、福島県産農産物の2015年度の実績として、玄米、野菜・果物、畜産物、栽培きのこで基準値を超過したものはゼロです。

現在、16カ国で規制が撤廃されていますが、未だに65の国・地域において、日本からの輸入品に規制がかけられています。しかし福島産の食品を含め、日本の食品は安全だということを認識いただき、規制を解除してもらいたい。先般もEUが規制を緩和しました。これからも引き続き、私たちは検査結果など正確な情報発信を続けてまいります。

更なる復興に向けた今後の課題は何でしょうか。

東北は、インフラも産業も復旧しましたが、観光客が戻ってきていません。豊かな自然、美味しい食事など、素晴らしい観光地に恵まれている東北地方へ、ぜひ海外から多くの方に観光に訪れていただきたいと思います。

2015年2月には、英国のケンブリッジ公ウィリアム王子に福島の温泉旅館にお泊まりいただきました。安倍総理とともに福島県産の食材を使った料理とお酒を「美味しい」とご堪能いただけ、大変嬉しく思いました。ご視察いただいた本宮市の児童向け運動施設も、このご訪問を記念して、Prince William’s Parkとの愛称を使用させていただいています。

復興庁も、今年を「東北観光復興元年」として、観光客誘致に力を入れていきます。東北に賑わいが戻ることが、産業や生活復興への足がかりとなるのです。今年5月にはG7サミットが日本で開催され、財務大臣会合が宮城県仙台市で開かれる予定です。2019年のラグビーW杯では岩手県釜石市が会場の一つとなり、さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは予選大会や事前キャンプが東北でも行われると思います。ぜひそれらの機会に、多くの皆さんに東北を訪れていただきたいと、心から願っています。