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Highlighting JAPAN

ある生き方を紹介する

2012年、マレーシア政府より東方政策留学生の中で際立った実績を残した人物として表彰を受けたハッサン氏は、長年の日本での経験を踏まえ、ハラルビジネスには教育によるハラルへの正しい理解が重要だと考える。

関心が高まるハラルビジネス。国費留学生として初めて日本の地を踏んでから、すでに25年以上日本に住んでいるマレーシア・ハラル・コーポレーション株式会社代表取締役 アクマル・アブ・ハッサン氏は、一般社団法人ムスリムプロフェッショナルジャパン協会の代表理事でもあり、イスラム文化を理解するのには必要不可欠な「ハラル」(日常生活で、口にするもの、身に着けるものなどイスラム教の教えに基づき許可されているもの)への理解を、ビジネスと教育を通じて広めていこうとしている。

「マハティール首相の『ルック・イースト政策』の一環として行われていた国費留学の試験に合格し、1990年に群馬大学に留学するまで、私は一度も日本を訪れたことがありませんでした。けれど地元の人と親交を深める中でこの国が大好きになり、そのまま日本で就職しました」とアクマル氏は振り返る。

いずれ自らビジネス経営をしたいと考えていたアクマル氏は、大手日系銀行に就職後、マレーシア国際貿易産業省に転職し、2005年にマレーシア貿易開発公社の大阪事務所を開設するために再来日したことで、西日本全域の農業・畜産業や中小企業の実態を知ることになる。「良いものを作っているのに、売れない。国内市場のみを視野に入れているので、誰もが景気停滞と人口減少から縮小するマーケットの影響を受けていました。海外に売り出そうにも、ネームバリューもなく、進出方法もわからない。そんな声を多く聞き、それならば自分が日本の製品を、その品質と技術の高さが評価される海外に発信していこうと考え、起業しました」。

2010年にアクマル氏が設立したマレーシア・ハラル・コーポレーションは、主に健康食品、コスメティック、食品などの日本製品をマレーシアで販売している。イスラム教徒が遵守すべきハラル基準をクリアした原料や製造方法が守られていることが必要不可欠なので、自らハラルを守って生活し、なおかつ日本の慣習や特性も熟知しているアクマル氏の強みが存分にビジネスに生かされている。

「日本は成熟社会であり、物もサービスも揃いつくしていて隙間がない。率直に言って外国人が新たに参入して利益を得るのが容易な環境ではありません。それでも私が日本にビジネスの拠点を置くのは、『恩』、『徳』、『縁』といった概念を持ち、ビジネスにおいても人同士のつながりを大切にする日本人の精神を高く評価するからです。勤勉さ、真面目さや愛社精神といった美徳を備えた日本人スタッフとの仕事のしやすさは、大きな魅力です」。

増え続ける東南アジア地域の人口約5億8千万人のうち、46%はイスラム教徒だといわれる。ムスリムマーケットへの関心は高く、マスコミでも「ハラル」という言葉が頻出する昨今だが、アクマル氏は今の日本に必要なのはハラル製品を増やすことよりも、ハラルに対する理解を深めることだと考えている。これに関して日本では、これまで馴染みの薄かった「ハラル」について理解するよう様々な勉強会などの取組みが行われている。

日本で官公庁や企業向けにハラルセミナーを開催しているアクマル氏はいう。「ハラルに対する理解が足りないまま、単に製品だけ増やしてもだめなのです。正しい知識があれば求められているハラル製品やサービスが何なのか自ずとわかり、一過性のブームではない真のハラルビジネスを構築することができます。ムスリムマーケットは巨大で、そこで受け入れられることは日本経済復活にもつながる可能性があります。だからこそ、ハラルについての教育の大切さをもっと日本人にわかっていただきたいと考えています」。

日本とマレーシアの両国を愛するからこそ、単なる市場拡大ではなく真の理解に基づいたハラルビジネスを活性化させたい。その熱意が、アクマル氏の原動力となっている。