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Highlighting JAPAN

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日本のスポーツ

日本でもっとも有名な忍者(仮訳)

初見良昭氏は世界中から来る影武者に憧れる人や警察官などに侍の道と忍術を教え、要人や国家元首から称賛を受けている。

千葉県野田市にある愛宕駅周辺は、一見なんの変哲もない典型的な首都圏郊外の町だ。線路から数メートルほど離れたところに、黒い壁のごく普通の日本家屋がある。ところが、引き戸を開けて中に入ると、男女問わず外国人の顔が数名の日本人とともに出迎える。彼らは初見良昭氏が立案し、伝承している武神館武道体術を学ぶ武道の生徒たちだ。

「武道」という言葉の意味は広くいろいろな武術や人格形成を指す言葉だ。その様式と目的は多少異なれども、武道は封建時代に日本の侍や武者にとって闘いの場を征するのに必要な技術を提供した。剣道のような武道は武器を持って闘うことから派生し、空手などは素手で闘うことを主眼としている。また、柔道や合気道などは相手を素早く倒すことで実際の格闘は最小限に押さえることを目的としている。

初見氏は彼が道場で教える武道を、自身の体を使う技術を意味する「体術」と銘打っている。初見氏が武神館武道体術を創始したのは1970年であるが、彼が授ける武術(侍の武道と忍術を使ったまったく新しい先進の戦闘術)の歴史は古い。

時代が変わっても、武道の目的は変わらない。「もともとルールがあったわけではない。死ぬか生きるかの問題だった」と初見氏は語る。現代における様々な武術のスポーツ化と異なり、体術の唯一の目的は戦闘で勝つことである。

初見氏にとって武術は学生の頃から追求してきたものだ。大学時代は柔道を教え、26歳の時、忍術の最後の師のひとりといわれる高松寿嗣氏に師事して術を習い始めた。やがて初見氏は高松氏から9つの流派における「宗家」の地位を引き継いだ。

紫に染めた頭髪と鋭い眼光を持つ84歳の初見氏はあらゆる先入観を覆す。新たな技を披露する際、相手の攻撃を素早く横にかわし、自分よりはるかに頑強で若い相手をあらゆる迅速な身のこなしで圧倒する。「これは誰にでも習得できるものだ」と彼はあっさりと言ってのける。「体の大きさや男女の差は関係ない」と。

このような技は自然と注目を集めた。かつて、初見氏は世界中に足を運び、FBIの捜査官、米国や英国の特別捜査官、各国の軍人や警察官らに自身の技を教えた。武神館のホームページには多くの国々からの感謝状が掲載されている。「今では彼らがこの道場まで来てくれるようになった」と、世界を飛び回ることの大変さを吐露する。

稽古に日本人以外の参加者が多数を占めるのは珍しいことではない、と初見氏は言う。武神館武道体術の養成所は世界中にあり、門人の数は10万人を越える。生徒の一部は警備関連の仕事に就いていて、職業柄その技を必要としているが、それ以外の多くの人々は彼が教える武術を通して集中力の高め方や自己統制の意識などを学びに来ている。アメリカから来たドンさんは、「人生の中のすべてのことに対処する方法だ」と言う。カナダから来たステファンさんは知的な刺激が素晴らしいと感じ、「日常の仕事の中に何か新しいこと与えてくれる」と話す。「答えを自分で見つけなければならない状況に追い込まれる」と。

初見氏の武道の技術を疑うものはまずいない。一方で、優れた書家でもあり、文筆家でもある初見氏が真のアーティストであることをうかがわせる別の一面もある。彼の稽古はいつだって新しいのだ。「42年間、まったく同じことを教えたことは一度もない」と彼は言う。文武両道を志に持つよう生徒たちを導く初見氏の教えは、武術を越えた日本の魅力を世界に伝えている。



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