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Highlighting JAPAN

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日本のスポーツ

プロフェッショナルな笛(仮訳)

サッカーの国際審判員として世界のピッチを飛び回る佐藤隆治氏に、人から信頼される公正な判断が一層求められる国際大会での経験や今後の展望について語ってもらった。

サッカーの国際審判員として世界のピッチを飛び回る佐藤隆治氏に、人から信頼される公正な判断が一層求められる国際大会での経験や今後の展望について語ってもらった。

世界のスポーツ界で活躍するのはアスリートだけではない。監督やコーチはもちろん、国際試合で重要な役割を担う審判員もまた、世界のスポーツ界で活躍する存在である。日本でたった7名しかなれないという狭き門をくぐり、2015年1月のアジアカップや同年6月のニュージーランドで行われたFIFAU-20ワールドカップなどの国際大会で主審を務めたサッカー国際審判員の佐藤隆治氏にお話をうかがった。

日本を代表する若き国際主審として注目を集めている佐藤氏だが、大学までは自身も選手としてサッカーに打ち込んでいた。将来教員になる可能性をふまえ、2級審判員資格までは取得していたが、審判員という職業に興味はなかったという。しかし、現日本サッカー協会審判委員長である上川徹氏が2002年に愛知で行った講演がきっかけとなり、その日から審判員になることを目標に掲げた。「Jリーグでの一般的な話を聞いただけでしたが、なぜかピンと来るものがあったんです」という佐藤氏。まさに運命的な出会いだったのかもしれない。

佐藤氏は2004年12月に1級審判員資格を取り、2005年3月から1級審判員として活動を始めた。アマチュアのトップリーグであるJFLを皮切りにJ2、J1(プロリーグ)と経験を積み、2009年から国際審判員として活躍している。

「国際審判員としての代表戦デビューは2009年3月の国際親善試合の韓国対イラク戦でした。親善試合とはいえ、2010年ワールドカップ前年ということもあり、選手、監督、サポーターの気迫は相当なもの。それまでJリーグで十分経験を積んできたつもりでしたが、国歌が流れた時にこれが世界の舞台であることを実感し、最初の笛を吹くのは本当に緊張しました。同時に試合後はやりきった充足感もあり、いつかワールドカップレベルの国際試合で笛を吹きたいと強く思いました」。

国際審判員としての経験の中には大変なことももちろんあった。最も印象深い試合は、2014FIFAワールドカップ ブラジル大会のアジア2次予選の試合だ。

「劣勢になったチーム側の応援スタンドからモノが投げ込まれ、いったん試合を中断したのですが、そこから最終的に試合打ち切りを宣言するまでに2時間もかかってしまった。主審である自分が試合を打ち切る権限を持ち、これが打ち切らないわけにはいかない試合だと頭ではわかっていたのに、公式戦を打ち切る重みに心が揺れたのです。その時に公正な決断力と覚悟を決めて実行に移す行動力を持たなければ、国際審判員として通用しないのだと痛感しました」。

国際審判員は1年ごとの更新制で、1年を通してのゲームコントロール、レフェリング評価等をもとに日本サッカー協会からFIFAに推薦され、承認される仕組みだ。試合で良いパフォーマンスをしなければ国際審判員であり続けることは難しい。さらに日本の国際審判員は、海外での試合を担当するため、日本とは気候や時差など諸条件が異なる環境でも短時間でコンディションを整えて臨まなければならない。精神・肉体両面でタフであることを求められる仕事であることは間違いない。

「世界中の選手が『こいつが笛を吹いたなら仕方ない』と判断の公平さを信頼してくれる審判員になることが私の目標です。試合ごとに向上し、ステップアップできるよう、ひとつひとつの試合を大切に、経験を積み上げていきたいと思います」。世界中の様々なサッカー文化を肌で感じながら国際審判員として成長を続ける佐藤氏。向上心を土台に、ワールドカップ本大会の大舞台で笛を響かせる日はきっと近い。




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