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Highlighting JAPAN

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青年海外協力隊50周年

自立のサポート(仮訳)

ルワンダのストリートチルドレンの現実を青年海外協力隊員としてつぶさにみた日本のソーシャルワーカーが、ルワンダと日本双方の社会的弱者の自立支援をしている。

青年海外協力隊としてルワンダでストリートチルドレン保護と職業訓練に携わっていた加藤悦子氏。帰国後は、うつ病や引きこもりになった人たちが就職するための就労移行支援事務所「仕事ノアル暮らし」を主宰し、ルワンダの工房で作られた製品を日本に紹介することで支援を行っている。

「私が青年海外協力隊に応募したきっかけは、臨床心理士の友人がソーシャルワーカーとしてネパールに赴任する試験を受けたと聞いたことでした。大学で臨床心理学を学んだ私は、海外でカウンセリングスキルを活かすことができる仕事があるのだと興味を持ちすぐに調べたところ、次回の募集内容がたまたまルワンダのストリートチルドレンを支援する仕事だったのです」。

協力隊員に選ばれて2006~08年にルワンダに赴任した加藤氏の仕事は、ベルギーのNGOが運営するストリートチルドレンの保護施設で、スタッフにカウンセリング技術を教えると同時に、教育関係者と一緒に外回りをしてストリートチルドレンの保護を行うことであった。

「予想と異なったのは、ストリートチルドレンの多くには家庭がありました。貧しさゆえ、年長の子供は働かないと家族が食べていけないという状況の中、子供たちは長時間路上で過ごすうちに仲間と問題行動を起こし、そのため家族と疎遠になってよりどころを失っていくという悪循環に陥りがちです。それは単純に保護した子供を家庭に戻すだけでは解決しない問題であり、カウンセリングで心を癒すと同時に、彼らが収入を得ることができる環境を整え、家庭に安定した経済基盤を作ることが必要だと痛感しました」。

加藤氏は「小さなハートプロジェクト」(一般社団法人協力隊を育てる会)から支援を受け、2007年10月に工房を開設した。牛の角をアクセサリーなどに加工する職業訓練を卒業した青年たちがスキルを活かし収入を得られる職場だ。工房で作られた製品は現地の土産物屋、ホテル、大使館主催のチャリティイベントなどで販売され、青年たちは月約70ドルの収入を得ることができるようになった。現地の教師の収入月約50ドルと比較すると、これは十分な収入である。

日本に帰国後、カウンセリングの仕事に加え、ルワンダの貧困緩和支援も続けていける道を模索していた加藤氏は、「仕事ノアル暮らし」を2011年に愛知県で立ち上げた。18歳から25歳の約8人のワーカーがいるルワンダの工房で作られた製品は、「仕事ノアル暮らし」の通所者によって再加工され、国内のイベントなどで販売されている。販売利益はルワンダの工房に還元され、工房の運営資金となっている。

加藤氏は貧困や飢餓に苦しむ途上国の人々を直接支援するための寄付制度『世界の人びとのためのJICA基金』の支援を受けて、ルワンダの工房の機材購入費や連絡費にあてている。「そのような基金の存在はとても有り難く、協力隊OGとして誇りに思います」と加藤氏はいう。

「同じく協力隊OGが支援していた女性団体が作るエコバッグや、サイザル麻を編んだカゴやアクセサリーの販売支援も並行して実施しており、今後もっと日本での安定した販路を開拓したいと思っています」。

将来は10人程度の規模の工房をルワンダ国内に3~4か所作り、すべてルワンダ人によって運営が行えるようサポートしたいという加藤氏は、ルワンダと日本両方の社会的弱者の自立をサポートしたいという温かな思いに溢れている。



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