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Highlighting JAPAN

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青年海外協力隊50周年

ボランティアの絆がお互いの課題を解決させる (仮訳)

企業のグローバル人材育成を支援するJICA民間連携ボランティア制度。インドネシアにボランティアとして派遣された若手社員の事例を紹介する。

新興国や開発途上国における事業展開など、日本の企業活動のグローバル化が進むにつれ、グローバルな視野や素養を備え、さらに個々の企業活動が対象とする地域のローカルな言語や社会文化を理解した人材をいかに確保するかが課題となっている。JICAではこのようなニーズに応え、企業と連携してグローバル人材を育成するプログラム「民間連携ボランティア制度」を2012年に創設した。その特徴は、各企業のニーズに合わせ、受入れ国や要請内容、職種、派遣期間等をカスタマイズする「オーダーメイド派遣」だ。今後、事業展開を検討している国へ派遣し、現地でボランティア活動を行うことで、途上国の課題の解決に貢献するとともに、現地語や現地事情に精通し、人脈を作ることが可能となる。

香川県東かがわ市に本社を置く川田工業株式会社の川田寛貴氏は、この制度を利用して2014年にインドネシア共和国へと渡り、ジョグジャカルタ特別州政府文化観光局にて、日本人観光客を呼び込むための観光冊子作成や公式webサイトの立ち上げ、日本の旅行代理店への情報提供など、日本人観光客誘致のマーケティング活動を行ってきた。本年2月に1年の任期を終え、現在は川田工業のインドネシア事務所に駐在し、現地工場の運営と生産管理にあたっている。川田氏は1年間のボランティア活動を振り返って「ボランティアで得た経験と知識は一生の宝」と語り、同社代表取締役社長の村尾和彦氏は「企業側から見ても理想的だった」と称賛する。

川田工業株式会社はスポーツ用手袋の生産を手がけ、特にゴルフ手袋では日本国内シェア3割を誇る創業90年の歴史ある企業だ。本社は日本最大の手袋産地である東かがわ市に位置し、生産は全て中国などの海外工場で行っているが、2014年のジョグジャカルタでの工場開業にあたっては日本と現地とのビジネスのスピードや意思決定など、商習慣上の違いが懸念された。だが「現地の役所の許認可など、我々が自前で育成した人材ではなかなか進展しなかったことも、川田君が担当することで一発で取り付けることができた」と村尾社長が驚いたほど、川田氏が身につけた高い語学力と現地文化への理解、土地勘や人脈が大きな推進力となったという。

川田氏は観光局でのボランティア活動時代、自分の足で観光地を回り、現地の人々と直接会話して情報を集めるなど試行錯誤を重ねる苦労もあったが、「代わりに得た語学力や出会い、現地の文化的・地理的知識など、恩恵は計り知れない」という。のんびりとした社会風土は時として商習慣上の大きな障壁となるが、そこで着実にビジネスを進める方法なども経験の中で培っていった。

「しかも中小企業の場合、ボランティア制度の利用中は、JICAが人件費の一部を補填し、住居提供もしてくれる。現地への派遣コストを押さえながら優れた人材を育成できるため、企業側のメリットは非常に大きい」と村尾社長は話す。

村尾社長は、「川田君の成長を目の当たりにして、彼がインドネシア事業に力強い貢献をしてくれると確信している。実際の海外生産拠点で学ぶ感覚とグローバルなビジネスセンスは、ものづくり産業において大きな強みとなる」と期待を寄せる。

川田氏は「今後は自分の知識や経験を活かし、インドネシアでよい結果をもたらすことで、自分に素晴らしい機会を与えてくれた企業に恩返ししたい」と、生き生きと語った。



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