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青年海外協力隊50周年

世界も日本も元気にするボランティア事業(仮訳)

JICA田中明彦理事長インタビュー 

日本が行う政府開発援助(ODA)の一環として、国際協力機構(JICA)が実施するボランティア事業、青年海外協力隊。発足から50周年を迎え、さらなる発展を目指す本事業の意義について、JICA理事長を務める田中明彦氏に話を伺った。

――青年海外協力隊の理念についてお聞かせください
青年海外協力隊の理念には、開発途上国の発展への寄与、日本の友好親善、そして国際的視野の涵養の3つの側面があります。特筆すべきは、人と人の繋がりを通して、現地の人々と同じ目線に立って一緒に努力するという協力隊ならではの特長が理念の実現を後押ししてきたことです。日本ではグローバル人材育成の重要性が叫ばれて久しい。その先駆けとして50年前に開始された協力隊が、日本の国際協力を代表する事業として国内外で評価されている礎は、1965年の発足以来4万人を超える協力隊員一人ひとりが、そうした“協力隊スピリット”を築き上げてきたからだと考えています。

――日本の強みを生かしたボランティア活動とはどのようなものでしょうか
JICAは、資金協力によるインフラの整備から、技術協力による人材育成、草の根レベルのコミュニティ開発に至るまで、相手国の課題に合わせ、一元的な協力メニューの提供が出来る包括的な開発援助機関です。この強みを生かし、ボランティアが現地のJICAプロジェクトと連携して効果的な協力を促進している例がある一方、他の援助関係者がいないような地域で、一人で飛び込んで活動を展開する例もあります。いずれの場合も、現地の人々と共に考え、失敗や挫折も経験しながら直面した課題を解決していくと同時に、その過程で本人たちは多くのことを現地の人々から学びます。

――相手国からはどのような評価がありますか
相手国の要人等にお会いした際に、現地の習慣や文化を尊重し、直接触れ合いながら活動する日本のボランティアを高く評価する声を伺うことが多いです。礼節、謙虚さ、勤勉さといった日本人が普段身に付けている姿勢も、信頼関係の醸成に繋がっていると言えるのではないでしょうか。

――協力隊事業50年の成果としてはどのようなことが挙げられますか
ボランティア一人ひとりの物語があり紹介し尽くせませんが、例えばホンジュラスの算数教育では、派遣された200人超が教科書開発や教員養成に貢献しました。エチオピアの天然痘やバングラデシュのポリオなど感染症の撲滅でも、ボランティアによる献身的な貢献が寄与しています。また、内戦や政情不安の影響で難民生活を余儀なくされ、将来の見えない不安な生活を送っている子供たちに、スポーツや音楽を通じて生きる喜びや希望を抱いて貰う活動を行うこともあります。ボランティアが途上国の人々と共に積み上げてきた成果は様々です。
また、任期終了後も、国内外の民間企業、地方自治体、教育機関、国際機関、NGOなど様々な場で、途上国の現場で培った経験や能力を生かして活躍しています。4万人が50年をかけて築き上げてきた世界各国との人的ネットワークも、将来的な広がりの可能性も秘めた大きな成果であるといえるでしょう。

――今後目指していく方向性および目標を教えてください
グローバル化の進展と共に、世界が直面する課題は多様化・複雑化し、相互依存も深まっています。こうした変化する途上国側の課題・ニーズに応えて行く必要があるでしょう。また、今年2月に閣議決定された「開発協力大綱」の中では、「人間の安全保障」が理念として明確に打ち出されると共に、対等なパートナーとしての途上国との協働も重視されています。これらを具現化していく上で、ボランティアが「草の根外交官」として担う役割は今後もますます重要になります。
2015年、発足50周年という節目を迎え、次なる半世紀に向け、「世界を元気にしつつ日本も元気にする国際協力」としてのボランティア事業の更なる発展に努めていく所存です。

 




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