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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

山形

日本の裏庭を訪ねる(仮訳)




列車が北に向かうにつれ、風景が緑から雪に覆われた白に変化してゆく。ビルは少なくなって遠ざかり、平坦な地形がスギやカシの木が点在する峰や谷へと隆起してゆく。山形は文字通り「山の形」を意味し、実際に山が多い。出羽山、朝日岳、飯豊山が尾根を連ね、名高い最上川が南から北西の端に向かって日本海に流れ込んでいる。

山形最北の銀山川の湾曲に沿って、まるで僅かな建物が集まって眠っているような銀山温泉 (銀の山の温泉) の街に厚みのある雪が降る。水から湯気が立ち上り、消えてゆく雪もあるが、多くは厚く積もって昔ながらの瓦屋根を毛布のように包んでゆく。窓から暖かい光がこぼれ、霧の中に硫黄の匂いが漂う。宮崎駿監督の アニメーション映画『千と千尋の神隠し』 を思い出させる雰囲気である。

1400年代より銀鉱山として栄えた銀山温泉は、1600年代に最盛期を迎えた。銀が掘りつくされた後人口は減ったものの、温泉は病人たちの湯治場としてその後も知られていた。銀山温泉の街は人々が伝統的風情、鎮静効果のある湯や静かな雰囲気を楽しむ、絵のように美しい小村であり続けている。

銀山温泉にある旅館 (日本の宿)の一つ、昭和館では、緑茶とお菓子の用意された和テーブルのある畳の部屋に案内された。宿の中は心地良い暖かさである。すぐに夕食が出された。地元の食材を使った季節の料理が並ぶ。鮎の塩焼き (塩をまぶして焼いた川魚)、笹の葉に包んで焼いた味噌味の山菜、お米の粒が黄色と赤色になる紅花と一緒に炊いた紅ご飯などだ。食後には、利用客たちは豊富な種類の温泉を選ぶことができる。旅館内にある温泉、上階の露天風呂、あるいは数百円の入浴料を払い何度でも外に出られる町の共同浴場の一つに行くこともできる。その極めて軟らかい水は特にリュウマチや肌に良いと言われている。

山形は果物の産地として有名である。その筆頭はサクランボであるが、山形の農家ではイチゴや梨、葡萄、ブルーベリーなども栽培している。さがえグリーンパークは田舎の温室で食べ放題のイチゴ狩りを提供している。1000坪 (日本の計測単位でおよそ4平方ヤード) の温室には可愛らしい白い花をつけた植物の壁が広がり、人々を酔わせるようなイチゴの甘い香りがミツバチと共に空気をざわめかせている。訪れた人々は輝く赤い果実を大喜びで次々にほおばる。

その他の思い出深いアクティビティとしては、最上川で船に乗り、有名な俳人、松尾芭蕉がこの地方で歩いた旅路の一部を辿ることである。こたつ舟と呼ばれる、こたつ(厚い布団を乗せた加熱式のテーブル) がついている長く平らな船は、冬の期間運航しており、40人の乗客を乗せることができる。乗客は快適な布団の中に座り、静かで雪に覆われた河岸や周囲を漂う浮氷を観賞する。舟下りは年中無休でどの季節でも楽しめる。

船頭は芭蕉が歩いた「細道」や河童と名づけられた峡谷や滝などの見所を説明する。そして観光客たちがお弁当を食べ、熱いお茶を啜っている間、哀愁のある山形の民謡を歌って聴かせてくれる。野生的で美しい風景を眺めていると、昔この川を旅することの大変さを容易に想像することができる。一度この景色を見てしまうと、すぐにまた戻って来たくなるだろう。

日本の北の地方は春が訪れる直前まで真っ白な銀世界に包まれる。山形の旅は、そんな日本の北国が持つ独特の情緒を楽しむことができる貴重なひと時であった。



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