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Highlighting JAPAN

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地球温暖化対策

エコモデル

京都市の省エネへの取り組み(仮訳)



国際社会が環境問題に関して初めて足並みを揃え、温室効果ガスの具体的な削減目標を明文化した京都議定書が誕生したのは、1997年のこと。それ以来、京都市は全国に先駆けて、温室効果ガス削減や省エネ活動に取り組んできた。家庭の使用済み廃油からバイオディーゼル燃料を製造し、ごみ収集車や一部の市バスの燃料として使う取り組みの成功をきっかけに、現在ではさらに進化した地球温暖化対策が進み、環境モデル都市としてさまざまな挑戦を続けている。

一つめは、全国初となる廃棄物から石油燃料の代替となるエタノールを製造する技術開発事業だ。京都市で収集される一般廃棄物の7割を占める紙ゴミや生ゴミは、バイオマス資源でありながら調味料などで汚れてしまっているため、そのままでは再利用することができない。同時に、この廃棄物の浄化こそがごみ資源再利用の技術上最もコストのかかるポイントであり、廃棄物からバイオマスを回収して再利用するのは割にあわない、と世界的にも考えられてきた。

しかし、京都市環境政策局地球温暖化対策室課長・山田一男氏は、「それなら、仮に醤油や汚水で汚れていてもバイオマスを分解してエタノールを作れる性質の酵母があればいいのではないか」と思いついた。日立造船から熊本大学に酵素研究のエキスパートがいると聞き、相談を持ちかけると、なんと「想像通りの酵母が出来上がったんです。言ってみるものですね」と、山田氏は茶目っ気たっぷりに語る。

京都市と熊本大学及び日立造船がタッグを組んだこの産学公連携事業は、環境省の補助金事業に採択され、すでに試験運転を開始している。都会のゴミから石油代替燃料が生まれるということで、『都市油田発掘プロジェクト』と呼ばれる事業ネーミングにも、やはり山田氏のユーモアが光っている。

京都市内において、エタノールは1リットル140円程度で取り引きされているが、現在、この方法を用いると1リットル80円以下で製造できるまで開発が進み、2015年度以降の実用化が予定されている。

京都市のもう一つの挑戦は、パナソニックと共同で実証実験を進めている熱発電チューブの開発事業だ。2種類の異なる金属を接合して加工した特殊なチューブの中にお湯を流すと、手で触れられるようなぬるま湯でも物体の温度差を電圧に変換する現象が起きて発電するという仕組みだ。お湯や蒸気、排ガスなど、身近な場面で発生する低温排熱を利用して温めたお湯を使える実用的な発電法で、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトにも指定されている。現在、京都市の廃棄物処理施設で、山田氏が設計した実験プラントにパナソニックのシステムを組み込み、ゴミ焼却時に発生する熱を利用し、その実証実験を実施している。

「配管そのものが発電デバイスになる、世界初のシステムです」と、パナソニック先端研究本部主幹研究員の菅野勉氏は両手のひらに収まるほどの小さなチューブを指して言う。このサイズなら、自動車や工場、ビルの給湯システムなど、どんな場所にも組み込んで電力を提供することができる。画期的で効率的なこの新技術は、「安定的な発電方法として、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献できる」と菅野氏は語る。パナソニックは今後のさらなる小型化と量産化を行い、実用化に向けて取り組む意向だ。

京都という古くからの伝統のある街で、革新的かつ世界最先端の省エネ技術に取り組む人々が、皆とても生き生きとしているのが印象的だ。日本の国際競争力を支えているのは、創造的な研究者たちの創意工夫と実験精神なのかもしれない。



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