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Highlighting JAPAN

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日本のテキスタイル

紙の近代化

現代のニーズに合わせた和紙の製品開発(仮訳)



和紙とは手漉きで作る日本古来の紙のことである。2014年11月、「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」として石州半紙(島根県)、細川紙(埼玉県)、そして本美濃紙(岐阜県)がユネスコ無形文化遺産に登録された。日本からは、去年の和食に続き22件目のユネスコ無形文化遺産登録となる。そんな中、和紙を現代の需要に合わせて製品開発をしている企業が増えてきている。

本美濃紙の産地である美濃市出身の市原慶子氏は、和紙で作った製品で「みの紙舞」というギャラリーを営んでいる。市原氏によると、和紙の魅力は薄くて均一性があるところだという。そのため、軽く、丈夫で、光を通した時に美しい風合いが作り出される。中でも、一般的な和紙の製造工程では縦揺りにのみ漉かれるのに対し、美濃和紙は縦揺りと横揺りで漉くので、繊維の絡まりがよくなり、丈夫な紙が作り出せるという。

市原氏が和紙で作っている製品の中で近頃大きな話題となっているのが、神戸ファッション美術館を初めとする多くのギャラリーで展示されてきた和紙のウェディングドレスである。和紙の性質を上手く利用することで、軽くて、通気性、保温性に優れ、見栄えの良いドレスができあがるという。また和紙は敏感肌やアトピー体質など肌にトラブルを抱えている人たちも使える天然素材であるため、医療的な可能性も秘めている。

しかし、もともと市原氏は和紙に関する仕事をするつもりはなかったという。きっかけとなったのは、1988年にアメリカオレゴン州立大学大学院に福祉を勉強しに留学した時である。工作に向いている性質から、和紙をお年寄りの方々にも簡単に楽しめるレクリエーションに活用したところ、美濃和紙の持つ1300年の歴史と独特な文化がとても関心を集めた。そして、大学の学長の強い要望を後押しに、日本で和紙という文化を広める活動を始めた。その際、折り紙や便箋といった既存の活用ではなく、現代でより多くの人に親しんでもらうために、和紙を布として使うことにした。

和紙はしかし、そのまま布に使うことはできない。そのため、理工学の分野で経験の少ない市原氏は、試行錯誤を重ね、和紙の弱点を克服するための加工剤を一から開発した。この加工剤により、分子レベルで親水性を高め、空気中の水分を吸収する性質を和紙に与えることができたと市原氏は言う。和紙は水を含むことでしなやかな形になり、布として加工されれば、シルクのように美しい光沢が実現できる。また、仕上げに樹脂コーティングを施す従来の和紙加工技術とは違い、燃やしても有害ガスが出ないため、環境への配慮もなされている。

このように、現代の需要に合わせた和紙を商品開発することで、文化を広めることができたと市原氏は話す。特に海外で和紙のウェディングドレスの展覧会を開く際に、多くの人々が和紙の衣類や日常品に使える利便性に驚き、日本の文化の幅の広さに感心するという。また、日本国内でもこのウェディングドレスがきっかけで日本の文化に関心を持ったという声が多く寄せられているそうだ。

市原氏は、「より多くの人に和紙のことを知ってもらい、日本の伝統工芸の世界がどれだけの幅を持っているかを世界に伝えて行きたい」と今後の展望を語る。ユネスコ無形文化遺産登録が後押しとなって、日本文化が広く親しまれていくことが期待できそうだ。



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