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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

栃木

山々の高嶺と魅惑の民芸品(仮訳)




本州中部に位置する栃木県は新幹線で東京から北に1時間ほどの距離だ。北と西の県境を山脈で囲まれた内陸の栃木は、神社仏閣が集まる日光の歴史的名所や湯元、塩原などの温泉リゾートでもその名を知られる。北へ行くほど風景は山が連なる山岳地帯となり、風景が一変する。栃木の曲がりくねった山道上って行くと、やがて南には一気に関東平野の全容を望むことができる。

那須高原にあるマウントジーンズスキーリゾートには、穏やかに揺れる距離にして約2キロのゴンドラが伸びる。頂上では山を包む新鮮な空気を胸いっぱいに吸うことができる。那須高原は四季折々たくさんの花々に彩られる。春にはまばゆいばかりの黄色の水仙、夏にはゴヨウツツジの白い花、夏の終わりから秋にかけては青紫のリンドウの花。暖かい季節にはハイカーは那須岳の5つの峰を縦走することも可能だ。朝日岳、茶臼岳(ちゃうすだけ)、南月山(みなみがっさん)、黒尾谷岳(くろおやだけ)、そして三本槍だ。冬にはこの場所は家族向きのスノーパークになり、ハイキングトレイルはスノーシューをする人には絶好のコースになる。

この高原からはるか下のほうに広がる緑の田園地帯を見下ろすことができる。栃木は多くの食べ物を生産していて、牛乳やたまご、いちごなどは特によく知られている。那須岳からすぐのところには「お菓子の城」があり、栃木の新鮮な食材を使った、カスタードクリームの入ったふわふわのケーキやチーズケーキ、芯に生地を絡めて焼くドイツ発祥のバームクーヘンなどが作られている。ここでは日本の和菓子も楽しめる。運がよければ、鏑木タダオ氏のお菓子造りのデモンストレーションを見ることができるかもしれない。和菓子・洋菓子作り50年の経験を持つこの達人は、この店の限りなく軽やかで風味豊かなチーズケーキを、意外な材料を使って作った。葛粉を使ってしっとり感と舌触りのよさを出したのだ。

県南東部には陶器好きにはたまらない益子の町がある。ここは東京の秋葉原から直通のバスも出ている。19世紀の中頃から知られるようになった益子焼の町には何百もの焼き釜がある。沿道には陶器の店が並び、陶芸市の頃には店の外に並ぶテーブルにもたくさんの食器類がうず高く積まれている。うどんどんぶり、茶碗、マグカップや土鍋などの多くは益子特有の釉薬で色づけされていて、もみ殻を使った青磁色、また柿色などの器が並ぶ。

自身で手を泥だらけにしてちょっと自分だけのオリジナル作品をつくってみたいという人には、ろくろと手びねり、両方のワークショップがある益子焼窯元共販センターなどで陶器造りを体験できる場所がいくつかある。もしかしたらあなたも隠れた自分の才能を発掘するかもしれないが、益子の職人たちの手にかかればそのひとつひとつを作るのも簡単そうに見える。おそらくは、これらの美しい器類に注ぎ込まれている高度な技と心に気づかされることになるだろう。

益子には日下田藍染工房の拠点がある。千年以上に渡り日本で使われて来た藍は国内で栽培され、220年の伝統を持つ昔ながらの設備で生糸や生地を染めていく。工房では、淡い空色から深い紺色まで30段階もの青の濃淡で染めた製品が作り出される。のりのステンシルを使って、染めてから水にさらす伝統的な方法で作られる魅力溢れる布地の模様を作ることができる。事前に連絡を入れておけば染色の工程を見学することもでき、また工房の売店ではここで作られた製品を買うことも可能だ。

自然のいざない、文化の魅力、そしてクリエイティブな職人の心は他の場所でも見出すことができると思う。しかし、栃木を訪ねる予定を加えれば、観光中心の典型的な旅行ではなく、自分でも予期しなかった、忘れがたい体験がプラスされてひと味違ったものになることだろう。



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