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Highlighting JAPAN

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明日をつくるベンチャー企業

環境にやさしいフィランソロピー精神

ミドリムシがどのように世界の栄養問題を解決するか(仮訳)




藻の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の豊富な栄養素には古くから多くの大学や研究機関が注目し、特に世界の食料問題の解決のため研究が行われてきた。東京に本社を持つ株式会社ユーグレナは、2005年にこのユーグレナの屋外大量培養に成功し、わずか10年足らずの間に飛躍的な成長を遂げたベンチャー企業の雄である。

「高校生まで、私は国連に就職して貧しい人々の役に立つ仕事をしたいと考えていました。」と代表取締役社長の出雲充氏は言う。「しかし、大学一年の夏休みにバングラデシュへ行き、後にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が創設したグラミン銀行でインターンシップをしたことがきっかけで、バングラデシュの貧困問題と栄養失調の人たちを目の当たりにし、自分は食の側面から貧困問題を解決したいと思うようになりました。」」

ユーグレナは1660年代にオランダの研究者アントニ・ファン・レーウェンフックによって発見され、日本ではミドリムシの別名でも知られる。藻の一種で植物と動物の両方の性質を持ち、59もの栄養素を含むのが特徴だ。これほどまでに栄養価の高い生物なので天敵も多く、自然界では一定以上増えることはなかった――最近までは。

出雲氏は「1980年代からユーグレナで食料不足を解決するというアイデアはあり、屋内で少量培養している機関は少なくありません。特殊な培養液を使うことで私たちは菌などの外敵からユーグレナだけが生き残る方法を発見し、屋外大量培養を実現し、低価格で安定したユーグレナの供給を可能にしたのです」と言う。

ユーグレナを乾燥粉末の形でサプリメント、ドリンク、クッキーなどさまざまな食品・飲料として摂取できるようにした健康分野とバイオ燃料分野が同社のビジネスの2本柱であり、健康分野では飲料、菓子類や酒、米にいたるまでユーグレナを使った食品が販売されている。バイオ燃料分野では、いすゞ自動車と共同で開発したバイオディーゼル燃料をバスに入れ定期運行が既に実施されており、JX日鉱日石エネルギーと日立製作所と共同で研究を進めているバイオジェット燃料も、オリンピック開催と同じく2020年までには実用化される計画だ。

出雲氏によれば、日本はもともと発酵、醸造技術が抜きんでた国だという。「日本は世界にその技術を発信していかなければいけないと思います。微生物発酵であるユーグレナ培養とその食品への応用の可能性をアピールしたいですね。」

同社は経済産業省所管独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構からの研究資金を受けるほか、文部科学省所管独立行政法人科学技術振興機構プログラムでは燃料用をメインとした遺伝子組み換えユーグレナ研究が採択され、また日本を代表する12の研究に550億の予算から資金提供をする現内閣の革新的研究開発推進プログラムの対象にも選ばれている。

急成長する同社だが、出雲氏の理念は学生時代からぶれることがない。「現在わが社はバングラデシュで毎日約2500人分、年間約60万食分の『ユーグレナ給食』(ミドリムシ入りクッキー)を提供しています。栄養たっぷりのユーグレナが入ったこの給食を、2030年には100万人規模に提供することを目指していて栄養失調に苦しむ人々の助けになりたい。そして、その先は各国や国連主導でユーグレナを活用して世界の飢餓問題を解決してほしい。」

貧困のない社会をつくるというフィランソロピー(企業による社会貢献活動)こそが同社の成功の底力と言えそうだ。



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