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Highlighting JAPAN

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国際協力60周年

ソーシャルビジネスの未来を築く

ガーナの栄養改善プロジェクト(仮訳)



世界に知られる調味料「味の素」やアミノ酸を代表製品とする味の素グループが、創業以来積み重ねてきた食品科学やアミノ酸栄養についての研究知識と情報を発展途上国の深刻な栄養不足問題解決のために活かす新しいソーシャルビジネスを、JICAや米国国際開発庁(USAID)をはじめとする国際機関と協力して進めている。離乳食の栄養バランスを改善することで子供たちの健康に貢献する「ガーナ栄養改善プロジェクト」について、味の素株式会社研究開発企画部の取出恭彦氏にお話を伺った。

「味の素グループは2009年に創業100周年を迎え、その記念事業として始まったのが、この『ガーナ栄養改善プロジェクト』です。ビジネスを通した栄養改善事業という持続可能なソーシャルビジネスを目指すにあたり、2006年から味の素がガーナ大学と共同で必須アミノ酸の一種であるリジンによる栄養改善の研究をしていたことや、ガーナが政治的にも安定し、ソーシャルビジネスを作り上げるのに適したことからガーナをプロジェクトの場所に選びました」。

途上国では子供の栄養不足が深刻な問題であるが、母親の妊娠から子供が2歳の誕生日を迎えるまで、いわゆる「最初の1000日」の栄養を改善することが最も大切だと言われている。この期間の栄養不足が引き起こす体と脳の発達不良は、その後取り戻すことが難しいからだ。

「ガーナの伝統的な離乳食であるココは、発酵させたトウモロコシのすっぱいお粥です。生後6ヶ月ごろから離乳食が始まりますが、ガーナで最も一般的な離乳食がココです。しかしココだけでは成長に必要な栄養素であるタンパク質や微量栄養素を十分に摂取することができません。そこで地元でとれる大豆を主原料に各栄養素を強化したココプラスを開発しました。現地の人々はココを食べるときに砂糖を加え、甘酸っぱい味にして食べますが、その代わりに必要な栄養素と適量の砂糖を含むココプラスを混ぜてもらう。味の好みも徹底的な調査で現地の人においしいと言ってもらえる仕上がりにしました」と取出氏はいう。

試験的に販売した貧困地帯の母親たちからは、子供たちの健康状態がココプラスによって短期間に劇的に改善したと喜びの声が上がり、2015年春からの本格的な販売開始に向け手応えは十分だ。

「栄養改善の為の食品は、通常の食品に求められる『おいしさ』や『安全』などの要素の他に、栄養改善の為の食品は、人々に栄養の大切さを理解してもらわないとその食品の購入に結びつかないところに難しさがあります。栄養教育を効果的に進めるためには、ガーナ政府、援助機関、国際NGOなどとの連携が大変重要です。ガーナ栄養改善プロジェクトは子どもの栄養改善を目的としたソーシャルビジネスだからこそ、また『最初の100日』の栄養改善というという重要な課題に焦点をあてた活動だからこそ、ガーナ政府保健省や、JICAやUSAIDを含む多く団体が協力してくれました」。

ソーシャルビジネスでは連携がWIN-WINの関係を生み出すことができる。たとえば現地企業がとの連携により現地の材料を使って生産することで雇用を生む。国際NGOとの連携で女性のネットワークによる訪問販売の流通モデルを構築することは女性の自立支援につながる。政府保健機関やNGOとの連携でローカルの人々の栄養の知識を高めることができる。パートナーシップなしにソーシャルビジネスの成功は困難だ。

取出氏は「単に金銭、人的なリソースを提供するだけでは、長期的な開発援助はうまくいきません。持続可能なソーシャルビジネスを確立することにより地元の人たちを含むすべての関係者にとってWIN WINの状況を作り上げることが、新しい効果的なアプローチではないかと考えています。ソーシャルビジネスの成立は、連携により、すべての関係機関のノウハウや英知を集めることで初めて可能になると考えています。ガーナ栄養改善プロジェクトを通して、ソーシャルビジネスの成功モデルを作り、今後それを更に世界に広げていくことができればと考えています」と話す。



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