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Highlighting JAPAN

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地方の活性化

地域活性における課題と成功、そして未来(仮訳)

椎川忍氏インタビュー

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日本経済の再生に向け、地方から元気を創造しようと全国で地域活性化の取り組みが進められている。日本における地域再生への歩み、そして成功の鍵はどこにあるのか。地域活性化の第一人者であり、現場に精通する地域活性化センター理事長・椎川忍氏にお話を伺った。

 

――日本の地域発展や活性化はどのような歩みを辿ってきたのでしょうか。

明治時代以降、日本の国家発展思想は「外発的発展」が中心でした。西欧のシステムに追いつき追い越したいと国づくりをし、市場原理にのっとった経済中心の発展を遂げました。その結果として、日本ならではの文化や伝統の価値を置き去りにしてしまいました。経済効率至上の発想は、有限な質の高い地域資源を本当に有効に使っているとはいえず、地方では自分たちがもともと持っていた良いものが失われつつあります。日本はいま、日本独特の文化や伝統を生かした国づくりや地域活性化に取り組むべきです。

そこで提案しているのが、「ネオ内発的発展」です。地域の人材や資源を生かしつつ、外部から人材やノウハウ、資金を導入しながら、それらを融合させて取り組むことです。情報通信技術と地方分権が進んだ今だからこそ、そういうことが可能になっています。そういった人材の育成や派遣のために、国も人材育成プログラムの支援を行ったり、外部の人材を誘致する制度を作ったりしています。

――地域の資源を生かした地方活性の取り組みにおける成功事例を教えていただけますか。

鹿児島県鹿屋市の柳谷集落、通称「やねだん」の試みは、様々な活動で自主財源を確保、独自の福祉や青少年育成に取り組み、行政の補助金に頼らないコミュニティづくり、地域再生の挑戦として、たくさんのメディアで紹介されています。一言で言えば、やねだんは300人の大家族を作ったのです。皆が姓ではなく名前で呼び合い、お互いに声を掛け合うような充実したコミュニティ、つまり絆の再生です。

結果として犯罪はほとんどなく、子どもは皆が兄弟のように育ちます。高齢者は元気に働いて、長患いすることなく天命を迎えます。医療・介護費用は鹿屋市平均の5~6割程度です。畜産公害を抑え、畑に入れると良い野菜がとれると伝えられてきた土着菌を培養して商品化したり、古民家を再生し、芸術家の移住を誘致したりと、幸せなコミュニティづくりによってそこに住む人たちが幸せになるという好例です。さらに、伝統的な芋焼酎(サツマイモの一種であるカライモから作られる日本のお酒)が外国に輸出できるようになるなど産業おこしにも成功しています。最近では人口も反転し、高齢化率も下がってきています。

高知県でも、県庁の職員が地域へと駐在する仕組みが効果を上げています。例えば、ある特産品を持つ地域の生産者と、その特産品を魅力ある加工品や料理に仕上げる菓子職人や有名シェフを引き合わせるなど、地域と外部の人材やニーズをマッチングさせるのです。

滋賀県東近江市も、人間の信頼関係やつながりで社会問題を解決しながら、持続的発展が可能なまちづくりをすることに成功しています。荒れ果てた里山や森林をボランティアだけで再生し、障害を持った方やニートやひきこもりの青年に社会参加の場と雇用を提供しました。

――成功のために重要なことは何だと思われますか。

地域再生の成功例に共通するのは、お金だけでなく人のつながりで問題を解決する志と、まずは自分たちでやってみようという自立心であり、地域の外側と内側両方の視野を持ったキーマンとなる人材がいることです。地域課題の解決のノウハウは、まさに同じ経験を持つ他の地域にあるのです。県や国といった「上」ではなく、同様の自治体や地域など「横」を見れば解決の糸口は見つかるということです。

地方活性化を進めたいなら、まずは現場に足を運ぶことが重要です。机上の議論でなく、現場で実際に土を触り、ものを作り、地元の人々と交わり、多くの多様な人たちとじっくり語り合う。そこで得る感激、感動、気づきが地方活性化のイノベーションを起こすのです。

 





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