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Highlighting JAPAN

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水と生きる

酒類総合研究所

清水と酒の関係を築く(仮訳)


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日本には、「名水あるところに名酒あり」という言葉がある。日本全国の名水の地には、必ずと言っていいほど日本酒の蔵が存在する。美しい水を守ることが、酒造りの未来へと繋がるのだ。

日本酒は英語で「米のワイン」と言われることがよくあるが、これはあまり正確な表現ではない。ワインは葡萄の糖分を発酵させて造り、ビールは麦芽に含まれるでんぷんと酵素を糖化して生成される糖分を発酵させることにより造られる。同様に、日本酒を造る場合には、米の糖化とアルコールの発酵が同時進行する。そのため、日本酒は醸造されると表現する。日本酒の多くはワインのように熟成させるよりも、ビールと同じように購入してから数カ月以内の新しいうちに飲むのが一番おいしい。

日本の醸造試験所は、科学的研究を通じて伝統的醸造技術を改良することを目的とする、酒類に関する技術の国立研究機関として1904年に設立された。その後酒類総合研究所と名称を変え、1995年に東京都から東広島市の西条町に移転し、現在も酒類の高度な分析、評価、研究を行っている。当研究所は、日本の酒類業の健全な発展を図ると同時に、酒税の適切かつ公正な賦課を定める責任も担っている。当機関の研究は講演会、出版、インターネットを通じて専門家や消費者と共有されており、また酒類の品質を評価するコンテストも行っている。

小さな区域に9つ以上の醸造所がある西条は、酒類の研究機関の立地として自然な選択であるように思われる。「広島の酒造りの伝統は、三浦仙三郎がこの地域の軟水を使って日本酒を醸造する方法を発見した時に始まります」と酒類総合研究所の奥田将生博士は説明する。「彼は軟水と硬水の醸造過程が異なることを早くに発見し、自分が発見した技術をこの地の醸造社会に伝授しました」。

淡水のミネラル含有量は各地方により異なり、ミネラル分の少ない水は「軟水」と呼ばれる。西条の水は、軟らかいことで有名である。「以前は軟水で日本酒を作ることは非常に難しかったのです」と奥田博士は説明する。「ですが後味の柔らかいとても滑らかな日本酒ができます」。低温でゆっくりと発酵させなければならない軟水から作られる日本酒は女酒と呼ばれるそうだ。「一方で、ミネラル含有量の高い水から作られた日本酒は男酒と呼ばれます。これはミネラル分の多い環境では水中の微生物が非常に活発で、辛口のキレ味を与えるためです」。

醸造に使用する水のミネラル含有量は注意深くバランスを取らなければならない。たとえば、微量の鉄分は微生物に必要であるが、多すぎると日本酒は変色し、香りが損なわれる。従って、鉄分の標準含有量が0.02 ppm以下になるよう厳密に管理する必要がある。醸造過程に欠かせないその他の重要なミネラルには、日本酒の酵母や麹の増殖を助けるマグネシウムやリンなどがある。

西条において酒造りに適した地下水が湧き出るのは酒蔵通りといわれる一本の細長い通りに集中しており、酒蔵はこの周囲に密集している。これらの酒蔵は高い煉瓦の煙突で簡単に見分けることができる。西条・山と水の環境機構連絡事務局の畝崎辰登氏は、通りを歩きながら歴史的建造物に立ち寄り仕込み水を味わうことを楽しんでいる。「龍王山に降った雨は、地下にしみ込み約50年かけて酒蔵通りへたどり着きます。西条の酒蔵はそれを酒造りに使っています。私たちはこの水を守るために、龍王山の手入れを続けています」と彼は言う。「西条の町にある酒蔵は、この山(龍王山)から300メートルのところにあり、小さな地区に隣り合っていますが、蔵それぞれに特別な独自な味わいの日本酒をつくっています。その水源である龍王山が、酒蔵から歩いていける距離にあるのは素晴らしいことだと思います。ちょっと小高いところに立てば、水源の山、酒造りの神を祀った神社、煙突の立つ酒蔵など、酒造りのまちを見ることができます」。

確かにその様子を見ることができる。さらには、その香りさえも味わうことができるのである。



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