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Highlighting JAPAN

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リーニングイン ーザ・パワー・オブ・ウィメノミクスー

エムスクエア・ラボ

アグリビジネスに対する、速くて斬新、しかも優しいアプローチ(仮訳)



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静岡県は緑茶、わさび、みかんの日本の主要な生産地のひとつであり、その雄大な自然には、果樹園、茶畑、野菜農園が広がっている。次世代のアグリビジネス(農業関連ビジネス)における生産性を向上させるイノベーションがこの地で生まれたのは、ごく自然なことだ。そしてそれは、ひとりの女性が自分の子どもにより新鮮な野菜を与えたいという努力の成果である。

加藤百合子氏が農業シンクタンク、エムスクエア・ラボを設立したのは2009年。2人の子育てをする中で、農業と食の大切さを実感し、東京大学農学部で学んだ知識や製造業で培ったものづくりの経験を活かして子どもたちの暮らし に直結したビジネスを自分で手掛けたいと考えるようになったという。社名のエムスクエア(M2)には「Mama」という意味が込められている。

エムスクエア・ラボは日本の小規模農業生産者と販売者向けの効率的な生産流通システムの開発を目指している。日本の農業では、生産者と販売者との間に流通業者が複数入る構造が標準的であり、流通ルートにおける情報伝達手段はせいぜい電話かファックスである。加藤さんは、「全くITを活用していないのです」と語り、それを変えることに挑戦している。

エムスクエア・ラボは、オンラインでの農業データ管理システムに加えて、ビジネスマッチングサービスとマーケティングツールを提供する事業を通して小規模農家を支援している。エムスクエア・ラボの環境計測機器フィールドサーバは、高性能カメラを使用して農業現場のライブ画像を10分間隔で撮影するほか、温度、湿度、日射強度などをリアルタイムに計測する。フィールドサーバがモニターしているすべての農園の状況は、オンラインで閲覧することが可能だ。情報が定常的に流通することにより、販売者は生産物の納入日をより正確に予測できるようになり、そのため栽培の早い時期から情報交換を始められるようになっている。現場で、端から端まで透明化することで、生産者がより効率的に小売業者のニーズを満たすことのできる農業システムを作る。

当然のことながら、提供するソリューションがすべてハイテクというわけではない。エムスクエア・ラボではベジプロバイダーという生産者と販売者を結びつける事業も行っており、そこでは販売者からの情報を生産者に素早く伝えるために、電話を用い手作業でのデータ入力も行っている。

「当社では人と人との結びつきを強くしたいと考えています。販売者には生産現場を見てもらい、生産者には販売現場の体験をしてもらう取り組みを進めています。このような活動を通して、両者とも相手の立場をよりよく理解できるようになるのです」と加藤氏は語る。ベジプロバイダー事業では、月例の生産者会議を開催して消費者動向や販売者からの要望に関する議論を行うほか、商品開発、農園管理、耕作技術などに関して専門家を招いての勉強会も開催している。

エムスクエア・ラボの活動の結果、生産から販売店に並ぶまでの時間が短縮され、より新鮮な野菜が届けられるとともに、廃棄される野菜が減少するという成果が得られている。2012年、加藤氏は日本政策投資銀行主催の第1回女性新ビジネスプランコンペティションで女性起業家大賞を受賞した。

この「農業革命」の旗手は次に何を目指すのだろうか? 加藤氏は「我々のビジネスを海外に展開したいと思っています。生産者と販売者は国が違ってもインターネットを通してつながることができます。日本の果物と野菜をもっとたくさんの人々に食べて欲しいのです」と語る。彼女は、静岡県と世界をつなぐことに挑戦している。



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