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Highlighting JAPAN

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科学と技術

メガトンウォーターシステム

海水逆浸透技術が世界の飲料水を作る(仮訳)



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国連は、世界の人口が2050年までにさらに30億人以上増加すると予測しているが、この人口増加に伴い、既存の淡水供給能力では深刻な水不足が発生すると考えられている。

海水の淡水化は、今後人類が直面するこれらの問題の対策方法として大きな期待を集めている。従来、大型海水淡水化装置の大半は海水を沸騰させ、凝縮された蒸気を収集する多段フラッシュ法(MSF)で海水を蒸留してきた。一方、海水逆浸透技術(SWRO) には導入される海水をより効率的に真水に変換させる機能があり、海水淡水化技術の進化を象徴する発展である。

1970年代から水処理に関する研究に携わってきた東レ株式会社フェローの栗原優博士は、「日本は雨量が多いため国内的には高度水処理施設を必要としません。そのため当初から、サウジアラビアや中国など、信頼性の高い産業用および農業用淡水供給設備を必要としている国々に注目していました」と語る。

栗原博士は国際的な水研究分野における日本の地位確立に直接寄与してきた。日本は1980年代には、世界のMSF法(多段蒸発法)において60-70%のシェアを占め、また水処理プラントの設計および建設においても相当程度のシェアを獲得している。しかしながら、韓国が低い為替レートと安い製造コストを武器に水処理プラント建設分野に進出し、総合プラントシステムにおける日本のシェアを脅かすこととなった。

SWROとは、圧力が加えられた塩水を淡水のみを透過させるろ過膜に通すことで塩類を取り除く技術である。このシステムの実現性は膜の性能に大きく頼るが、逆浸透膜の製造市場において日本は現在でも高いシェアを有している。2010年に日本政府は、最先端研究開発プログラムの一つとして、栗原博士がリーダーを務めるメガトンウォータープロジェクトに対して34億円の資金助成を行った。このプロジェクトは、SWROによる海水淡水化の消費エネルギー削減と環境に及ぼす影響の低減を目標としている。

「競争力を強化するためには、低コストで稼動できる持続可能な低炭素海水淡水化技術を開発することが重要です。これができれば、大規模かつ低コストな淡水化プラントを必要としている開発途上国や海岸部の大都市にまで我々の顧客基盤を広げることが可能になります」と栗原博士は説明している。

既存の淡水化プラントにおける淡水生産量は1日当たり50万立方メートル (50万m3/d) に満たない。栗原博士は、助成金を活用し、目標の淡水生産量を100万m3h/d、重量に換算するとほぼ1メガトンとなる世界最大のSWROプラントを建設することを目指している。

メガトンウォーターシステムの主要な特徴の一つは、低圧逆浸透膜を使用することにある。使用する低圧膜は既存の膜よりも薄くて表面積が広くかつ孔が小さいため、低い圧力で海水淡水化が可能である。栗原博士によれば、実験サンプルではエネルギー消費量が20-30%低減できることが確認されている。

メガトンウォーターシステムのもう一つの特徴は、エネルギーを回収するために浸透膜発電(PRO) を利用することである。PROとは、塩水と淡水間の塩分濃度差を利用したエネルギー回収技術である。栗原博士の研究チームは、PROを利用することによって濃縮廃水の塩分含有量を下げることが可能であるため、海洋環境への影響を低減できることを見出した。

研究チームはさらに、第一SWRO段階から排出される濃縮海水に再度逆浸透処理を施すことで廃水排出量を削減し、入出力効率の向上にも成功した。メガトンウォーターシステムによって海水から得られる飲料水の割合を40-45%から最大65%まで高めることができ、20%のエネルギー削減も可能になる。

現在プロジェクトは最終段階を迎えており、栗原博士は小規模システムでの試験を行って低コスト性と低環境負荷性の確認を行う予定である。システムの商業的生産が実現すれば、日本は、成長し続ける世界の需要を満たすことができる、より安く、効率が良い水供給システムを提供することが可能になるのである。



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