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Highlighting JAPAN

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日本の輝く技術力~中小企業の革新~

スズキプレシオン

栃木で営まれる精密さと家族(仮訳)



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東京駅から電車に乗って1時間半ほどで栃木県鹿沼に着く。美しい丘陵と穏やかな川に囲まれた静かな街だ。凛と澄み渡る空気と静けさの中で一日は過ぎてゆく。まさに温泉リゾートや自然を楽しむ場所としては理想的な土地柄のようだが、ここは高度精密機械加工の拠点でもある。

スズキプレシオンは1961年に鈴木精機として創業した。外部顧客の注文を受けて機械の部品を製造する会社だった。1991年に創設者の鈴木悦郎氏は息子の庸介氏に会社を引き継ぎ、1年後、社名を「スズキプレシオン」と改名し、会社は高精度機械加工へと移行した。

自動車や航空産業用の微小で精密な部品の製造に加え、2006年にスズキプレシオンは医療器具用の部品の製造開始に向けた認可を取得した。自社の最先端精密機器を駆使し、骨折の治療などで使用されるチタン製インプラント部品加工技術を保有している。鈴木庸介氏が会長となった現在、長男の拓也氏が60人の熱心な従業員を持つ会社のCEOに就任し、スズキプレシオンは外部顧客のための部品メーカーから、自社の製品を製造・販売する会社へと転身しようとしている。

スズキプレシオンの成功の秘密は自社開発のIBスピンドル(回転軸)にある。多くのNC小型精密旋盤は熱変異などの影響を避けるため、ミーリング加工(回転工具で品物の平面・曲面部を加工すること)の動力部の回転速度を抑えており、それにより生産を制限せざるを得ないが、スズキプレシオンは得意分野とする微細加工を行うためには高速回転が必要であった。そこで自社独自の精密加工技術を駆使し、ギアによる高速回転が可能なスピンドルを開発した。

独自のIBスピンドルの開発を始めたきっかけは、輸入のスピンドルの精度が満足のいくものではなかったことだった。その結果、誤差わずか3ミクロンかつ4倍のスピードで回転するスピンドルが生まれ、それだけで加工精度向上させ、低コストで製造能力を大きく拡大させるものとなった。このような能力のスピンドルは他にないことに気づき、スズキプレシオンは自社設計の製品の製造・販売を開始したのだ。

しかし、仕事の質と従業員の生活の質への配慮は、会社の急速な収益拡大や規模の拡大よりも優先される。3代にわたり、誇りある、仕事熱心なリーダーによってゆっくり着実に築き上げられてきたスズキプレシオンは、従業員も家族のように扱われるという意味での家族経営の会社といえる。だから工場のエンジニアや技術者たちはみな極めて熱心で、仕事と会社に高い誇りを持っている。これはもっと大きな規模のメーカーや会社には難しいことだろう。

スズキプレシオンの最大の情熱は彼らの製品だけではなく、従業員たちの仕事に対する誇りと仕事を大切に思う気持ちを見ることにあるのかもしれない。会社からは、気まぐれな経済の荒波を乗り越えてきた家族の力を感じさせた。それはあたかも会社の前を流れている川のごとく、ゆるやかでたえまない成長だ。



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