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Highlighting JAPAN

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日本の輝く技術力~中小企業の革新~

東大阪市

市と製造業の相乗効果(仮訳) 



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大阪府東部は製造業が盛んな地域として有名である。その中でも今回は「ものづくりの町」として全国的に知られている東大阪市に注目する。

大阪市と東を奈良県とで隔てる山の間に挟まれた東大阪市は工業都市である。東大阪市の製品や部材、さらには加工の技術力は、国内はもちろん世界でも重要な役割を担っており、全国でここでしか製造されていない製品や世界的に大きなシェアを占める部品メーカーが存在するほか、航空機、人工衛星、新幹線、自立式電波塔として世界一の高さを誇る東京スカイツリーにも“メイド イン東大阪”の技術が生かされている。

東大阪市のものづくりのまちとしての発端は江戸時代に伝わった鋳物産業が始まりとされる。同時代に始まった水車技術を利用した伸線業、河内地方で広まった木綿産業などと共に、時代の変化に柔軟に対応しながらさまざまな業種・業態へと転換を遂げ、発展し続けてきた。

「以降、市内の工場の数は増加を続け1983年には1万社に達し、2008年には6016社となったものの、1平方㎞の範囲に116社が存在し、工場密度としては全国1位(工場数4000以上の都市)となっています」と東大阪市役所の本田敬祐氏は話す。

「東大阪市の優れている点は、特定の部品製造や加工をしている小規模の企業が集積しているという点です。例えば、金属関連の産業機械を製造する会社では、金属の曲げ加工、研磨、塗装、穿孔などを専門とする企業をすべて近くに立地するなど地域内で助け合い、こういった利点を生かして短納期、小ロット、かつ精度の高いものづくりを行うことができるのです」。

東大阪市が他都市と異なる点は、この地の企業の大半が資本的な繋がりがないにも関わらず、こういった協力関係が築かれているという点である。多くの企業都市では、大企業が頂点に、さらに下の層に孫会社が続くというピラミッド構成を形成している。しかし、東大阪市の各企業はそれぞれの専門分野に特化し、独自技術を向上させる。そして、近隣の協力工場と緩やかなネットワークを構築する。

しかし、昨今、質だけでは売り上げは確保できず、マーケティングにおいてはデザインが重要な役割を果たす。東大阪市は、環境とデザインに価値のある製品を製造するためのきっかけを企業に提供する。同市はイタリア、中国及び日本にオフィスを構える世界的プロダクトデザイナーの喜多俊之氏を迎え、この地域の企業にデザインの重要性を説明するセミナーを開催してきた。このセミナーから、地元製造業者数社との複数のコラボレーションが生み出されている。

喜多氏のデザインアドバイスから生まれた工業製品の例として、株式会社オーシンはガスでもIHでも使用できて熱効率が高く、洗いやすい土鍋を生み出し、2010年に日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞した。また、株式会社ユーコンは喜多氏のアドバイスを受け、LEDの照明器具の表面に和紙を施し、目に優しい光を届ける製品を生み出した。デザイン性の高い空間を伴った店舗を提供する百貨店内食品メーカー店舗や宝飾ショップで採用され、店舗のコンセプトやイメージづくりに貢献するデザイン製品として活用されている。

東大阪市は事業を誘致し、促進するために、地元製造業者が新しい市場を開く際の支援をするだけでなく、新事業及び既存事業の拡大に対して固定資産税や都市計画税が全額補助される。海外の展示会に出展する企業には、出展料にかかる助成金が交付される。また、東大阪商工会議所は東京で開催された「もうかりメッセ東大阪」にて地元の企業の展示商談会を行なった。このような取り組みにより、首都圏および海外への進出を目指す東大阪の企業が足がかりを掴むチャンスへと繋がった。

東大阪市は同市の独自性を示すための製造業の重要性を認識している。同市の2カ国語対応の広報資料がそれを最も良く示しているかもしれない――東大阪市は無限の可能性を持つものづくりのまちなのだ。



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