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特集世界遺産──日本文化をのぞく

世界遺産──日本文化をのぞく(仮訳)

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世界遺産は、1972年にユネスコ総会で採決された世界遺産条約に基づき、世界遺産リストに登録された、人類にとって「顕著な普遍的な価値」を有するとされたものだ。文化遺産、自然遺産、両方を兼ね備えた複合遺産の3つに分類され、現在、日本を含め、世界遺産条約の締約国は190カ国、エジプトのピラミッド、フランスのヴェルサイユ宮殿、アメリカのグランドキャニオンなど962件が世界遺産リストに記載されている。

2012年11月、世界遺産条約採択40周年記念最終会合が京都で行われ、今後10年を見据えた世界遺産条約の方向性を提言する「京都ビジョン」が発表されている。京都ビジョンでは、世界遺産保全による持続可能な開発、遺産保全におけるコミュニティの役割を訴えている。世界遺産保存による地域への経済効果が、地域住民に等しく行き渡ることで、地域住民参加の遺産保存へとつながる。これこそが、コミュニティ参加による持続可能な開発というものだ。

「世界遺産条約は世界のほとんどの国が締結しており、ユネスコで採択した条約の中で、もっとも成功した条約と言えます」と1999年から2009年までユネスコ事務局長を務めた松浦晃一郎氏は言う。

その松浦氏が在任中に力を入れた取り組みの一つが、無形文化遺産保護条約の推進だ。祭り、音楽、儀式などの「生きた遺産」を、世界遺産と等しく人類の財産として保全するために、2003年にユネスコ総会で採択されたのが無形文化遺産保護条約である。

だが、無形文化遺産の保護も、世界遺産の保存も、そこに住む人々の参加が欠かせない。なぜなら、その多くが、長年、そこに住む人々が作り上げてきたもの、保存してきたものであり、外部の専門家だけで保存することは、財政的も、人員的にも、困難だからだ。京都ビジョンでは、世界遺産保全のために、無形文化遺産を通じた「地域社会の持続性の確保」を呼びかけている。


日本の世界遺産

日本がユネスコ世界遺産条約を批准したのは、1992年のことだ。その後、1993年に、法隆寺地域の仏教建築、姫路城が文化遺産として、そして、屋久島、白神山地が自然遺産として、初めて登録された。現在日本は、12の文化遺産、4つの自然遺産が登録、さらには、暫定リストに、富士山、鎌倉、富岡製糸場など12の文化遺産が記載されている。

日本の世界遺産の特徴の一つは、木が重要な要素になっている点である。屋久島や白神山地といった自然遺産はもちろんのこと、法隆寺、姫路城、京都の文化財、白川郷・五箇山の合掌造り、厳島神社、日光の寺社、平泉の中尊寺金色堂なども木で作られている。ヨーロッパを中心とする西洋に多い石の世界遺産に比べ、痛みやすい木の遺産を保全することは容易ではない。しかし日本は、長年に培ってきた木、あるいは紙の修復技術を駆使し、世界遺産を後世へと引き継ぐ努力をしている。現在、日本の世界遺産では、17世紀初頭に建てられた姫路城、法隆寺地域の仏教建築物の一つで7世紀末に建てられた薬師寺の東塔で、大規模な修理が進んでいるが、創建当時とできる限り同じ材料、工法、デザインでの修理が行われている。

「日本は、歴史的な建造物、史跡、文化的景観、無形の文化財について、様々な法整備を進めることで、保全を行ってきました」と松浦氏は言う。「世界遺産は人類共有の遺産なのです。世界遺産条約の締約国は、自国以外の世界遺産を守る義務もあるのです」

日本は世界遺産保存のために、文化財修復・保存などの知識や技術を活かし、様々な活動を行っている。その一つが、1989年に、ユネスコに世界各地の文化遺産保存を支援するために設立した「ユネスコ文化遺産保存信託基金」だ。この基金で支援した世界文化遺産には、例えば、カンボジアのアンコール遺跡が上げられる。日本は修復の専門家を派遣、カンボジア人スタッフとともに修復活動にあたり、現地の技術者への技術移転を行った。また、タリバーンによって2大石仏が破壊されたアフガニスタン中部のバーミヤン渓谷にも日本人専門家を派遣、残っている数々の洞窟の壁画の修復や遺構の調査を行っている。

「日本には技術的、学術的な専門家が数多くおりますので、そうした人材を世界遺産のために活用することが出来ます」と松浦氏は言う。「世界には、世界遺産がない国もまだ、約40カ国あります。日本は特に、途上国の世界遺産新規登録、保存に貢献する役割があると考えています」

今月号の特集記事では、日本の世界遺産及び世界遺産の暫定リストに掲載された遺産を通じ、日本の気候、風土、歴史、文化について紹介する。

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