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Highlighting JAPAN

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連載|Japan Brand

仙台箪笥(仮訳)

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東北地方の中心地、仙台にある門間箪笥店は、今でもこの地で伝統的工法により箪笥を製作している二軒しかない家具工房の一つである。ギャビン・ブレアが、同社の第七代目当主である門間一泰氏に話を聞いた。

日本式収納棚である箪笥は、18世紀初頭に世間一般で使われるようになった。その頃になると、一般庶民は一式以上の衣服を持ち始めるようになり、収納する場所がどこかに必要だったのである。箪笥はそれ以前のほぼ千年にわたり存在してきたが、日本においてその発達が本当の意味で進展したのは、衣服を着替えて片付ける贅沢さが一般庶民に浸透してからだった。それでも、箪笥の大きさやデザインは依然として持主の地位を定めるものであり、侍の箪笥には刀をしまう幅広の上段引き出しがついていた。

江戸時代(1603−1867年)に、箪笥は各種の衣服、刀剣類、薬など、その用途によって分類されていた。最も特徴的なものの一つは、日本の伝統的な狭い居住スペースを最大限活かすために階段の形状で作られた階段箪笥だった。その後の明治時代になると、箪笥には装飾が施されることが多くなり、日本の各地で個々の様式が発展した。そうした中で最も高い評価を受けているものの一つが、東北地方の中心地である仙台の名を冠した仙台箪笥である。

仙台箪笥は主に衣服を収納するものだが、その手が込んだ飾り金具で有名な存在となっている。そうした金具のほとんどは、かつて刀剣工房で刀の金具類を作っていた職人独自の手仕事によるものである。

「他にも由緒ある仙台箪笥の要素としては、地元の欅材を使うことや長年の使用に堪えるよう施される漆塗りが挙げられます」。こう語るのは、門間箪笥店の門間一泰氏だ。門間箪笥店は、かつて仙台周辺で商売に精を出していた百軒ほどの伝統的仙台箪笥工房で今でも残っている二軒のうちの一つである。「もっとも、他の場所の素材や部材で同じような箪笥を作っているところもあるのですが」

門間氏は次のように説明してくれた:「うちの職人は漆を三十層ほど塗り重ねているのですが、もちろんそうすることで多くの時間を要し箪笥の値段も上がるわけです」。門間氏は家業である門間箪笥店の第七代目当主だが、その門間箪笥店は今でも仙台市中心の創業地に所在している。

また、箪笥が作られている工房もその場所にある。建物の中にはショールームを兼ねた仙台箪笥伝承館もあり、その傍らには十九世紀の創業以来ほとんど変わらない伝統的日本庭園が寄り添っている。


新たなビジネス

長年にわたり、門間箪笥店はダグラス・マッカーサー将軍(第二次世界大戦後の連合占領軍司令官)からフランス大使、日本の皇后陛下に至るまで著名な顧客のひいきとなってきた。

一般庶民にとって、箪笥はいささか値が張るものかもしれない。門間氏は、同社の製品をより受け入れやすくするワインラックやマウスパッドといった品目を紹介しながらそう認めた。

「こうしたアイテムで、日本の若者が当社の製品に興味を持ってくれたらと考えています。そうすれば、彼らが年齢を重ねて金銭的に余裕ができた時には、仙台箪笥を一棹欲しいと思うかもしれません」。

2010年に日本でグッドデザイン賞を受賞した門間箪笥店は海外市場も視野に入れ始め、2011年には香港で展示会を開催し今年もマレーシアでの展示を予定している。ところが、円高や輸送コスト、輸入税といったことすべてが、すでに高価な箪笥の値段をさらにつり上げている。門間氏は、輸出するためにもっと購入しやすい価格にするアイデアに取り組んでいるところだと語った。

また、去年の3月11日に仙台を襲った大津波以降、浸水の被害を受けた大量の箪笥が修理のために門間箪笥店へ持ち込まれている。門間氏によると、木材から塩分を取り除き錆び付いた金具を修繕して引き出しがまた楽に開け閉めできるようにすることは、未だかつてない難題だという。中には一世紀以上の年代物もあるそうした箪笥を修復することが、関係者にとっては商売を超えた取り組みであるのは明らかである。

門間氏はこう語っている:「仙台箪笥は家具以上の存在です。美術品により近いものなのです」

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