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Highlighting JAPAN

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特集日本のお酒で乾杯!

日本のお酒で乾杯!(仮訳)

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フランスのワインやドイツのビールといった、世界各国にお酒の文化があるように、日本でも、古くから日本酒や焼酎といった様々なお酒が作られている。日本の酒造りは、その地域の米、麦、芋、水などの材料を使うのみならず、気候や文化にも深いつながりがあることから「日本らしさの結晶」と言われている。今月の特集記事では、日本のお酒と、それにまつわる食、酒器の楽しみ方も紹介する。

紀元前3世紀頃に日本に米作りが日本で広がって以来、米は日本の食生活に欠かせない。その米を原料とする日本のお酒が日本酒や焼酎だ(囲み記事参照)。最近では、国産ビール、ワイン、ウイスキーも多く流通されているが、日本の伝統的なお酒と言えば日本酒・焼酎と言える。

中でも、日本酒は、日本で米作りとともに始まったと言われるほど長い歴史をもつ。そして、海外と同様、日本酒は、宗教とも深く関わっており、古来より信仰されてきた宗教である、神道とも密接に結びついている。

例えば、神道の祭礼では、日本酒を神に捧げる風習があるが、そのお酒は『お神酒(おみき)』(「神のお酒」の意味)と呼ばれる。また、祭事だけではなく、一般の人もお祝い事に日本酒を飲むことが多い。「屠蘇(おとそ)」は、正月に、その時の邪気を払い、長寿を願って飲む日本酒だ。神前の結婚式で夫婦が契りの儀式として行う「三三九度」では、夫婦が盃で日本酒を飲む。また、春の桜の花、秋の月、そして、冬の雪を見ながら、人々が集い、日本酒を楽しむ。

このように、日本酒は、日本人の生活に古くから存在し、日本全国各地でその土地に根ざしたお酒が造られている。現在の日本酒造りは、15世紀に奈良の寺院が造った、精米した米を利用する「諸白」などの手法が基礎と言われ、今日の日本酒の原型となるお酒が造られていた。その後、16〜17世紀に、現在の京都府の伏見や兵庫県の灘で日本酒造りが盛んとなった。明治時代(1868-1912)には、全国的に活発化するとともに科学的な研究もなされるようになった。そして、米や水の品質が向上し、製造方法も洗練された現在、かつてない程の良質な日本酒が多く流通している。

日本酒を醸造する家を蔵、その主を蔵元と呼ぶ。現在日本には約1500の蔵が、47都道府県全てにある。蔵は地域の食文化の継承者ともいえよう。特に、東北地方は、日本酒の蔵元が数多くあり、その一つ、宮城県塩釜市の株式会社佐浦の佐浦弘一社長は、日本酒について、こう語る。「日本酒は日本の宗教、文化とも深い関わりを持ちながら歴史を重ねてきたのです」

1724年に創業した佐浦は、蔵の近くにある塩釜神社に捧げるお神酒を造る蔵元として歴史を刻んできた。2011年3月11年に発生した東日本大震災では、約200以上の蔵元が被害を受けた。佐浦も、津波による蔵の浸水、揺れによる建物外壁の崩落といった被害を被った。しかし、懸命の復旧作業によって、12月には製造設備の修繕を終え、今年はほぼ通常通りの生産を行っている。

大震災の直後から、佐浦は、地域の復興を目指し、売上の一部や、佐浦の店舗に置いた募金箱に集まったお金を義援金として地域に寄付している。「特に、地域の食文化を支える地元の水産関係の復旧を支援しています」と佐浦氏は語る。「地域の食文化の復興なくして、当社の復興もないのです」

日本酒と地域はまさしく、一心同体なのだ。


世界との架け橋

東日本大震災の影響で、一時、日本酒の輸出は減少したが、2011年度、日本酒の輸出は1万4000キロリットルと、10年前の約2倍、過去最高を記録した。近年の海外での日本食ブームと相まって日本酒が飲まれるようになっているのだ。米国向けが最も多く、全輸出量の約3割を占める。次に韓国、台湾、香港と続く。

日本政府は、日本酒・焼酎など国産の酒類を「國酒」とし、海外への輸出を後押しするために、2012年5月、「ENJOY JAPANESE KOKUSHU (國酒を楽しもう)推進協議会」を立ち上げた。日本酒・焼酎は他国の料理との相性も良く、「21世紀の異文化の架け橋」になると期待される。

協議会のメンバーでもある佐浦氏は「日本酒は食事の邪魔をしない食中酒としてとても優れており、和食はもちろん様々な料理に合わせやすく、特に、シーフードに良く合うと思います。米由来のうまみが、魚介の生臭さを消して味を豊かにしてくれます」と語る。「おいしい日本酒は白ワインにもけっして引けをとらない。今やワインは世界中で飲まれていますが、日本酒も世界に広がっていくポテンシャルを持っています。日本酒の美味しさをもっと海外の人に知ってもらいたいです」


日本酒

日本酒はビールやワインと同じ醸造酒である。米、蒸した米に麹菌を繁殖させた麹、酵母、そして水によって造られる。アルコール度数は13%から16%。日本酒の種類は原料や精米歩合(白米の玄米に対する重量の割合)によって8種類に分けられる。例えば、精米歩合が60%以下(玄米の表面を40%以上削った米を使ったもの)の日本酒を「吟醸酒」、50%以下のものを「大吟醸酒」という。また、日本酒造りの副産物である酒粕は、焼いて食べたり、魚や野菜を漬けるのに使われる。

焼酎

日本酒と並び日本を代表するお酒が、蒸留酒である焼酎だ。原料は、米、麦、サツマイモなどである。焼酎は、まず、米麹か麦麹に、水と酵母を加えて発酵させる。そうして出来た「醪」に麦(もしくは米や芋など)を加え発酵させる。そして、その醪を蒸留器に移し、加熱・蒸留し、完成する。焼酎のアルコール度数は、20〜45%と日本酒よりも高く、水、お湯、氷で割って飲むことが多い。
日本では、14〜15世紀頃から造られ始めたと言われている。主な産地は日本列島の南に位置する九州地方だ。佐賀県の「壱岐焼酎」、熊本県の「球磨焼酎」、鹿児島県の「薩摩焼酎」は、ウイスキーのスコッチ、ワインのシャンパンと同じように、世界貿易機関(WTO)が、これらの地域で生産されたものしか、その名称を使うことを禁じられている。

泡盛

泡盛は沖縄県で生産される焼酎のこと。当時、琉球と呼ばれた沖縄に、14〜15世紀頃にアジア大陸から伝わったと言われている。原料の米として、主にインディカ米が使われる。沖縄県で生産される「琉球泡盛」も、WTOが設定した原産地呼称になっている。

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