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Highlighting JAPAN

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特集国際社会における日本のグローバル人材育成

夢の舞台、オリンピックへ(仮訳)

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間もなくロンドンオリンピックが開催される。エルサルバドルでオリンピック出場選手を含むトップレベルの柔道選手を指導する青年海外協力隊隊員の活動を、ジャパンジャーナルの澤地治が紹介する。

日本の国際協力活動の一つとして独立行法人国際協力機構(JICA)が実施する事業の青年海外協力隊(JOCV)がある。彼らの使命は、開発途上国における経済・社会の発展、復興への寄与であり、その国が抱える課題に現地の人々とともに取り組むこと。JOCVが活動する分野の一つにスポーツ指導がある。2012年度の春の募集期間には、高校における体育指導、公共プールでの水泳指導、ナショナルチームでのソフトボール指導など、多岐にわたる内容で、JOCVの派遣要請が途上国から寄せられている。

 指導する対象は、普通の子どもから、ナショナルチームの選手まで様々であるが、JOCVの指導を受けた教え子がオリンピック出場を果たした事例も少なくない。例えば、2008年の北京オリンピックでは、モンゴルに初の金メダルをもたらした柔道選手、アフリカのシブチの女性陸上選手、モルディブの水泳選手など11名がJOCVの教え子であった。


エルサルバドルの柔道コーチ

そして、7月から開催されるロンドンオリンピックにも、JOCVの指導をうけ、出場を決めた選手がいる。中米のエルサルバドルから、柔道の66キロ級に出場するカルロス・フィゲロア選手だ。エルサルバドルに柔道の指導でJOCVが派遣されたのは1969年にさかのぼる。以来、1980年から1992年の内戦期間中を除き、ほぼ継続的にJOCVが派遣されている。過去、5名の柔道選手がオリンピックに出場している。

現在、フィゲロア選手を指導するのが、藤後あさみさんだ。昨年6月にエルサルバドルに派遣され、首都サンサルバドルで、フィゲロア選手を含むナショナルチームの選手を指導している。藤後さんは、日本屈指の強さを誇る天理大学柔道部の出身だ。

「大学在学中に、フランス遠征に行き、海外の柔道家たちと生活や稽古をともにしたのがきっかけで、海外で柔道の指導がしたいと考えるようになりました」と藤後さんは言う。

藤後さんは、エルサルバドルでは、月曜日から土曜日まで指導をしているが、道場にいる間は少しでも選手と雑談をしたり、柔道に関する相談に乗ったりするようにしている。さらに、柔道の練習のひとつである乱取り稽古(実践練習)には積極的に参加し、選手と一緒に汗を流すようにしている。

「着任して間もない頃は、指導における考え方の違いであったり、年齢も若く、女性であるということもあってか、現地指導者と衝突が起こることも度々ありました。言葉の壁から、言いたいことがうまく伝わらず、なかなか自分の意見を聞き入れてもらえないという、つらい時期もありました」と藤後さんは言う。「しかし、支えとなったのは、これまでの経験と、選手たちがいつも私に尊敬の念をもって接してくれること、そして、選手たちの柔道に対する姿勢が、着任当時よりも格段に良くなってきていることです」

オリンピックが近づくにつれ、地元のメディアからも注目が集まり、人々の期待も高まっている。オリンピックには、選手本人の強い希望と、エルサルバドルの柔道連盟やオリンピック協会の協力により、藤後さんも特別コーチとして同行することになった。

「オリンピックでは目標の8位入賞を目指して、どのような相手にも屈することなく、全力で戦って欲しいです」と藤後さんは言う。「試合中に、自分の得意技をどんどん繰り出し、勝つチャンスを作ることが出来る選手なので、非常に期待しています」

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