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Highlighting JAPAN

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特集世界に広げる「ライフ・イノベーション」

子ども医学教室(仮訳)

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病気や体の仕組みへの興味を持つ子どもを育むことは、ライフ・イノベーションを担う人材の育成につながる。東京で、現役の医師が小学生に向けに開催している医学教室は、まさにそうした試みの一つといえるだろう。ジャパンジャーナルの澤地治が報告する。

「みんなの目の前に4本の注射器があるけど、そのうち、2本には本物の血液、2本には絵の具が入っています。どれが本物の血液か分かるかな?」 東京都武蔵野市にあるホテルの一室で医師の澤田めぐみさんが優しく問いかけると、8名の白衣姿の小学生は注射器の中身をじっくりと観察し、懸命に見分けようとしている。

澤田さんが代表を務める「とうきょうキッズメディカルスクール」は、小学校3年生から6年生の参加者が、月に一回、実際の医療器具を使いながら、人体の仕組み、健康、病気を学ぶ医学教室だ。

この日のテーマは血液である。血液の働き、種類、病気について、クイズを解きながら知識を深めていく。参加者は顕微鏡で血液を観察して、赤血球や血小板をスケッチしたりもする。参加者のそばには、澤田さんの他に、数名の講師が寄り添い、つきっきりで実験や学習をサポートする。

「本格的な実験をしたいと思い参加しました。実際に顕微鏡を使って観察できたことが面白かったです」と参加者の一人、小学6年生の男の子は答える。「おじいちゃんはお医者さんですが、患者さんが元気になる姿を見ると、本当に嬉しそうです。僕も将来、お医者さんになって、多くの患者さんを元気にしたいです」

とうきょうメディカルスクールは、澤田さんが自らの子育ての中で、現代の子どもが、科学的な根拠に乏しい「疑似医学」に取り囲まれており、正しい医学を伝える必要があるという思いから始まった。当初、自分の子どもやその友達に、自宅を使ってボランティアで授業を行っていたが、2011年から一般の子ども向けに授業をスタートさせた。

とうきょうメディカルスクールでは、1年間12回の授業を通じて、心臓、呼吸、消化、癌、外科医の仕事などの様々なテーマを、内視鏡、エコーなど実物の医療器具を使って、参加者が楽しみながら学べるように工夫している。

「病気にかかったら、ただ単に医師から医療を受けるだけではなく、自分でも病気のことや薬のことが分かる、賢い医療消費者を育てたいのです」と澤田さんは言う。「それと同時に、子ども達に命や健康の大切さも知って欲しいです」

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