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Highlighting JAPAN

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特集震災から1年:被災地で活躍する外国人

福島を愛するカナダ人(仮訳)

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福島県の福島大学の学生課に勤務するカナダのバンクーバー出身のウィリアム・マクマイケル氏は、東日本大震災後、福島の情報を海外に向けて積極的に発信するとともに、被災地の復興に取り組んでいる。マクマイケル氏にジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

──福島の現状についてお教え下さい。

ウィリアム・マクマイケル氏:事故のあった東京電力福島第一原子力発電所の周辺地域では住民の避難が続き、沿岸部でも津波による被害が残されたままです。ただ、福島県の大部分では通常の生活を送るのに、障害はありません。福島大学のある福島市は原子力発電所から50km以上離れており、私は安心して暮らしています。

震災以前、福島大学では卒業後に東京で働きたいという学生が多かったのですが、今は福島に残って復興を支援したいという学生が非常に増えています。また、4月から新学期ですが、福島大学への受験応募者数も去年より増加しました。

──東日本大震災後、マクマイケルさんは、どのような活動をされていましたか。

東日本大震災後、福島大学の職員として、ルーマニア、カナダ、アメリカ、ドイツ、フランスなどの国々を訪れましたが、機会あるごとに、福島の現状と福島への支援を訴えています。どの国でも、人々が日本のことを非常に心配していることが感じられ、日本は本当に愛されているのだと実感しました。私は福島大学と海外の大学との提携に関する仕事もしていますが、東日本大震災後、各大学の被災地支援の一貫として、ルーマニア、ベラルーシ、中国、アメリカの大学と、交換留学などの提携が決まっています。

また、私はボランティアで、津波により甚大な被害を受けた福島県相馬市の原釜地区にある被災した幼稚園を支援するために「ハート・フォー・ハラガマ」を共同設立しました。そして、福島在住の外国人とともに、物資の提供、義援金集め、園児との交流などの活動を行っています。

──福島の魅力をお教えください。

「人」だと思います。福島の人は、お互いを思いやる気持ちが本当に強いです。東日本大震災の翌日、妻と3歳の息子とスーパーマーケットに行ったとき、私たちは誤って裏口から入ってしまいました。お店は長蛇の列でしたので、店外に出ようとすると、お店の人が子どものいる私達を気遣って、買い物をそのままさせてくれたのです。そして、お金を支払おうとすると、「今は大変だろうから、お金は落ち着いた時に払ってください」と言われました。

自然も素晴らしいです。私はスキーが大好きですが、福島の雪質はカナダにも劣らないほどです。また、樹齢1300年と言われる三春町の滝桜の桜も本当に美しい。

歴史的な建造物や遺跡も豊富です。例えば、福島市の郊外にある真夫山の中腹には、江戸時代(1603-1867)に岩壁に彫られたと伝わる仏像が並んでいますが、これは非常に歴史的な価値があるものです。

──今後の目標をお聞かせ下さい。

私は5歳から8歳まで、母の母国である日本で過ごしましたが、その頃、新渡戸稲造の伝記を読みました。それ以来、カナダと日本の架け橋となる仕事をしたいと思ってきました。私はまだ福島で約5年しか暮らしていません。でも、福島を一番愛するカナダ人の一人と自負しています。今、福島とカナダ、福島と世界を結びつけることが私の役割だと思っています。6月には福島大学の提携校であるアメリカの大学から、10名ほどの学生が約2週間福島に滞在して復興支援や農家作業といった活動を行う予定です。今後、もっと多くの学生を福島に呼びたいです。

また、昨年4月から活動を開始している福島大学の「うつくしまふくしま未来センター」にも海外からたくさん研究者が来てほしいです。ここでは、福島の復興のために、教育、防災、都市計画、環境など幅広い分野で研究を行われます。災害からの復興について研究することができ、しかもそれが実際の復興に役立つという場所は、世界でもここにしかないでしょう。ピンチをチャンスにかえて、福島の復興につなげていきたいと思います。

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