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Highlighting JAPAN

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特集震災から1年:被災地で活躍する外国人

魯迅ゆかりの地で学ぶ(仮訳)

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東北大学(宮城県仙台市)の中国人研究者の趙暁麗さんは、東日本大震災後も日本に残った。山田真記が報告する。

趙暁麗さんは、2008年に東北大学大学院に入学、博士号を取得した。現在も、日本学術振興会特別研究員として東北大学で研究を続けている。研究テーマは医療用器具に用いる新チタン合金の開発というものだ。

 「金属材料の分野では、東北大学は世界でもトップレベルにあります。教授の研究姿勢も素晴らしいし、研究設備も最先端のものが備えられているのです」と趙さんは言う。

 震災発生時は、大学も少なからず被害を受けた。研究室の本棚がのきなみ倒れ、実験用のガラス器具のほとんどが破損した。「あまりに突然の出来事で、生きた心地がしませんでした。大きな余震が起こる可能性があるから家に帰らない方がいいという先生方の判断で2日間、大学に留まり、その後、避難所に移動しました。先生方の適切な指示がなかったらパニックに陥っていたと思います」と趙さんは振り返る。

 震災後、海外からの研究者や留学生の中には、自国に帰る人も少なくなかった。しかし趙さんは、大学の復旧のために日本に残った。飛散したガラス器具の破片の処理や研究室の整理など、早急にやるべきことはいろいろあった。

「大学の先生方や学生仲間は、日頃からみんな親しく、私にとっては家族のような存在なのです。だから少しでも大学の復旧に貢献したかった」と趙さんは話す。

 研究室の復旧が終わり、研究が再開される中、2011年10月には、趙さんに新たな栄誉が与えられた。東北大学に在籍し、今後飛躍的な活躍が期待される中国からの大学院留学生に授与される藤野先生記念奨励賞を受賞したのだ。これは、中国の偉大な文豪であり、東北大学の前身である仙台医学専門学校に留学していた魯迅の恩師であった藤野厳九郎教授に因んだ賞である。

 趙さんの夢は、いずれ中国に帰り、日本で学んだ技術を母国で生かすことにある。

「今の私の生活は、震災前と全く変わりません。大学内も普段通りの風景が広がっています。私も変わらず研究に打ち込んでいきたいと考えています」と趙さんは言う。

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