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Highlighting JAPAN

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特集東北~震災から半年を迎えて

震災から半年、これからの復興(仮訳)

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東日本大震災の復興に向けた指針策定のために政府によって設置された東日本大震災復興会議が、6月25日、「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」を発表した。ジャパンジャーナルの澤地治が、東日本大震災復興構想会議の議長を務めた五百旗頭真防衛大学校校長に、提言の意義、被災地の今後の復興について話を聞いた。

──五百旗頭議長は東日本大震災の被災地を訪れて何を感じられたでしょうか。

五百旗頭真氏:阪神淡路大震災で、兵庫県神戸市の私の家は、地割れによって傾いてしまいましたが、大きく壊れることはありませんでした。ただ、近所の伝統的な木造の日本家屋は全壊でした。阪神淡路大震災では、同じ被災地域内であっても被害は「選別的」であったと言えるでしょう。しかし、東日本大震災では、被災地のほとんどは、津波によって深刻な被害を受けました。震災から一ヶ月後に、私は東北の太平洋岸の被災地を視察しましたが、町ごと全てが瓦礫化しており、災害には強いとされていた病院や市役所のような鉄筋の公共施設も壊滅的な被害を受けていました。人影がまったくない景色を見て、私はなんということだと衝撃を受けました。

──東日本大震災からの復興の中で、被災地にはどのような可能性があるとお考えでしょうか。

今回、津波を物理的に防御することは出来ないということが明らかになりました。これからの復興にあたっては、自然災害を完全に封じ込めるという考えではなく、災害時の被害を様々な手段を組み合わせて抑える「減災」の考え方が重要です。その考え方に立ち、東日本大震災復興会議の提言では、漁業関係の施設は海岸沿いに再建しますが、住宅などの海岸沿いの被災地域の高台への集団移転を提案しています。そして、移転した丘の町で、住宅だけではなく、学校、病院、老人ホームなどの施設を含め高齢化社会に必要な包括ケアのできる新たなコミュニティーを作らねばなりません。

さらに、被災地での再生可能エネルギーの導入も提言に盛り込んでいます。現在、原子力発電について様々な議論が起こっていますが、今後、再生可能エネルギーによる発電量を増やすことは避けられません。被災地の復興の中で、始めから、太陽光発電やバイオマス発電など再生可能エネルギーの仕組みを組み込んだ町を作るのです。被災地に作られるこうした先端的な町が、今後の日本の、そして世界のまちづくりのモデルになるのです。

また、阪神淡路大震災後、神戸市には国際的な防災拠点として人と防災未来センターが設立されました。今回も、東日本大震災の被害を正確に記録・分析し、その結果を世界中に広げるための拠点を宮城県あるいは岩手県に作り、世界の減災水準を上げることが日本の役割です。

なお、世界から受けた善意に応じるためにも、以前にもまして海外での災害救援活動に迅速に対応できる体制作りが必要です。例えば、自衛隊は、南西諸島(日本の南西、九州から台湾の間に広がる諸島)に、災害救援のための装備や物資を準備しておくデポ(倉庫)を設置する計画を立てています。

──議長として、世界の方々へのメッセージをお願いいたします。

阪神淡路大震災の時も、日本は非常に大きな被害を受けましたが、世界が驚く速度で復興しました。今度も、日本、そして東北は、大震災から必ず復興し、ますます輝きを持つと私は確信しています。世界の方々に是非、そうした復興のプロセスへの参加をお願いしたいです。既に、「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」のステップ1は達成し、原子炉は安定的に冷却された状態です。日本企業の生産も8月までには、震災前と比較し、95%まで回復を遂げています。世界の方々には、東北を観光で訪れる、あるいは、地域産業への投資を通じて東北の経済・社会の再生に参加して頂きたいです。

また、いつの日か、復興構想7原則にもあります、鎮魂の森が完成した時は、毎年3月11日に、日本人だけではなく、世界の方々も招いて、鎮魂と、再生を誓う集まりができればと思っています。

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