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Highlighting JAPAN

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特集東北~震災から半年を迎えて

福島の「海開き」(仮訳)

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福島県いわき市にあるアクアマリンふくしまは、太平洋に面した水族館だ。自然光が降り注ぐ大水槽にはイワシの大群が泳ぎ、時にキハダマグロとシイラが捕食のために群れに突っ込んでいく。屋外では、家族連れが魚釣りに興じながら歓声を上げている。

アクアマリンふくしまは、東日本大震災で深刻な被害を受けた。マグニチュード9.0の地震で、埋立地である周囲の地盤が1m近く陥没し、水道やパイプ類などの配管はすべて切れた。高さ5mの津波によって地下室が水没し、水族館の生命線である電気系統も全壊した。結果として、飼育していた750種20万点の生物の90%以上が死滅した。

「復旧作業は、開館11周年の記念日である7月15に再開させるという館長の一言で始まりました。全スタッフが現場に復帰した4月末のことです。 正直、私は、それは無理だと思いました」と飼育管理課長である津崎順さんは振り返る。「でも、懸命に作業を続けているうちに、再開によって地元の方々に笑顔が広がり、それが地域の活力になって、他の施設も再始動に向けて頑張ってくれるんじゃないかと思うようになりました。本当にやりがいのある仕事でしたね」

津崎さんは、スタッフの陣頭指揮を取りながら瓦礫撤去の終わった5月中旬から本格的な復興作業に取り組み、実質的にわずか2カ月で、予定通り7月15日に再開にまでこぎつけた。放射能のレベルもまったく問題ない。世界各国の水族館からは義援金が届き、国内の20を超える水族館からは海獣類の一時避難や魚の提供を始めとする様々な支援が寄せられた。例えば、震災後すぐにゴマフアザラシやセイウチは千葉県にある鴨川シーワールドに一時的に預けられた。そこで生まれたゴマフアザラシのオスの赤ちゃんは「きぼう」と名づけられ、今では、アクアマリンふくしまの人気者となっている。

年間90万人以上が訪れるアクアマリンふくしまは「命の教育」を大きなテーマとし、自然の状態を可能な限り忠実に再現する展示スタイルに工夫をこらしている。魚だけでなく、様々な植物、海草、無脊椎動物を自然光のもとで総合的に展示しているのも大きな特徴のひとつだ。子どものための展示施設「アクアマリンえっぐ」や環境保護に対する積極的な啓蒙活動など、独自の運営スタイルは世界的に高く評価されている。

「このアクアマリンふくしまの特徴をどう進化させていくか。ただ元の形に戻すのではなく、もっと素晴らしい展示へと発展させていきたいと思っています」と津崎さんは言う。

仙台市から車で来た親子4人連れのファミリーは 、外の人工ビーチで釣り上げた魚を自慢げに見せながらこんなふうに語ってくれた。

「ここはいろんな体験ができて、とても素敵な水族館なんです。こんなに早くオープンしてくれて、本当によかった」


アクセス

・福島空港から車で国道49号線を通って約1時間40分
・上野駅から常磐線に乗り、泉駅まで約2時間。泉駅から路線バスで最寄りのバス停「支所(ししょ)入口」まで約15分。下車後徒歩約10分

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