皇室が継承する伝統の鴨猟の技法。猟期外には「鴨場」の一般向けの見学会を実施

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鴨猟の様子

POINT

鴨場かもば」という施設をご存じですか?鴨場は、江戸時代から伝わる独特の技法を用いた鴨猟を行う施設で、現代においても皇室に伝わる文化の一つとして鴨猟が行われています。宮内庁が管理する鴨場は、埼玉県と千葉県の2か所にあり、国内外の賓客をもてなす場としても使われています。また、鴨猟のシーズン以外の時期には、一般のかたに公開する見学会も実施されています。今回は、あまり知られていない、鴨場の様子や役割についてご紹介します。

1鴨場とはどんなところ?

鴨場のあらまし

鴨場は、古くから伝わる伝統技法によって鴨猟を行う場所です。江戸時代には将軍家や多くの大名家が鴨場を所有し、狩猟や社交の場として利用していました。明治以降は、皇室が、網を使って野生の鴨を無傷のままで捕獲する独特の技法を継承して保存を図り、今日に至っています。
鴨場は、宮内庁の管理の下、現在、埼玉県越谷市の「埼玉鴨場」と千葉県市川市の「新浜鴨場」の2か所があり、毎年、野生の鴨などの渡り鳥が集まります。
こうした野生の鴨を、訓練されたアヒルを使って小さな堀へと誘導し、飛び立つところを網で捕獲する鴨猟が行われているのです。

埼玉鴨場と新浜鴨場の位置を示した地図捕獲した鴨は、種類・性別などを記録し、標識(足環)をつけてから全て放鳥して、野鳥の国際鳥類標識調査に協力しています。これは、鴨の生態や分布を把握する研究に大いに役立っています。

緑豊かで広々とした鴨場の全景(新浜鴨場)

鴨猟の歴史について

日本では古くから、網や鷹を使って野生の鴨を捕らえる鴨猟が行われていました。江戸時代には、将軍家や多くの大名家が、現在見られるような鴨場を各地に所有し、鴨を捕らえていましたが、明治以降、皇室では、大名家に古くから伝わる叉手網さであみと呼ばれる網で鴨を傷つけずに捕獲する方法を採用し、この伝統技法の保存を図り、現在に至っています。埼玉鴨場と新浜鴨場で使われている叉手網は、伝統に基づいて宮内庁職員が手作りしています。

叉手網

鴨場の設備と捕獲方法

鴨場の設備

鴨場には、次のような設備があります。

鴨場の全体図(略図)


元溜もとだまり:約12,000平方メートルの池。冬になると野生の鴨が渡ってくる。


大覗おおのぞき:覗き穴から元溜の鴨の様子をうかがうことができ、鴨猟の際は大覗で板木を叩き、訓練されたアヒルを引堀に誘導する。


引堀ひきぼり:元溜から引かれている狭い水路。訓練されたアヒルが引堀に入ってくると、それに釣られて野生の鴨も入ってくる。堀の両側にある小土手から飛び立つ鴨を叉手網で捕獲する。


小覗このぞき:小さな覗き穴から引堀の鴨の様子をうかがい、捕獲に向かう。


鴨場での鴨の捕獲方法

鷹匠と呼ばれる鴨場の職員は、越冬のためシベリアなどから元溜に集まってきた野生の鴨を、訓練されたアヒル※1を使って引堀に誘導します。鴨は、自身の姿に似ているアヒルに釣られて引堀に入ってきます。鷹匠は引堀で餌を撒き、引堀の奥までアヒルと鴨を引き寄せます。鷹匠は待機していた鴨猟の参加者に合図を出し、叉手網を持った参加者は一斉に堀の両側の小土手まで走り、それに驚いて飛び立った鴨を叉手網で捕らえます。叉手網は絹の糸で作られているため、鴨が傷つくことはありません。鴨猟が終わるとアヒルは元溜に戻っていきます。現在は鷹を使った鴨猟は行っていませんが、伝統に倣い、鷹匠は昔ながらの衣装を身にまとい参加しています。

※1 狩猟期間外である春から夏にかけて、鷹匠が板木ばんぎと呼ばれる板を小づちで叩き、その音に反応して引堀に入ると餌がもらえることをアヒルに覚えさせていきます。

2鴨場の様々な役割

賓客を接遇する場として活用

鴨場は、内外の賓客接遇の場としても用いられています。例年11月半ばから翌年2月半ばまでの狩猟期間には、各国の大使などが招待され、叉手網を用いて鷹匠の案内に従い、自ら鴨の捕獲に参加します。冬の朝、参加者は清澄な空の下で自然豊かな環境の中での鴨猟を楽しみます。
参加者は鴨の捕獲・放鳥の後に昼食の接待を受けますが、野生の鴨は一切食用にはしません。

鴨の捕獲・放鳥の後に午餐(昼食)が催される食堂(新浜鴨場)

野鳥の国際的調査に寄与

参加者が捕獲した鴨は、標識(足環)をつけ、全てを放鳥しています。また、一羽ごとの標識の記録は全て環境省に報告し、野鳥の生態や分布の国際的調査と研究に寄与しています。
宮内庁が協力しているこうした標識調査によって、鴨の移動範囲の広さや生存期間など、様々なことが解明されています。鴨場の鴨は傷つけることなく捕獲できるので、各方面の研究に大いに役立っています。

自然を残す貴重な場

鴨場は、その土地の自然保護の場としても貴重な存在です。埼玉鴨場と新浜鴨場のそれぞれの池には、冬になると野生の鴨の群れがシベリアなどから渡ってきます。これらの渡り鳥は毎年3千羽を超え、その種類はオナガガモ、ハシビロガモ、マガモ、コガモなど十数種に及んでいます。また鴨のほかにも、カワセミ、サギ類、バン類、カワウなども見られ、クロトキ、クロツラヘラサギなどの珍しい鳥も記録されています。水鳥以外に、時には鷲や鷹が姿を現すこともあります。このように鴨場は、現代では貴重な自然が息づく場所となっています。

3一般のかたが参加できる見学会も

埼玉鴨場と新浜鴨場では、以前から地域住民の方々を対象に鴨場見学会を行ってきましたが、平成28年度(2016年度)に政府において取りまとめられた「明日の日本を支える観光ビジョン」(平成28年3月30日 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議決定)を受け、地域住民以外のかたも参加できる見学会を実施しています(例年2月頃、6月頃に実施)。
見学会は鴨猟のシーズン以外の時期に行われるため、実際の鴨猟を見ることはできませんが、自然に包まれた鴨場の様子や、鴨場内の様々な施設を見学できます

見学会の応募方法

見学会の募集は、例年4月頃と12月頃に行われています。募集の詳細については、宮内庁ホームページの「お知らせ」で発表しますので、ご確認ください。

※埼玉県主催・千葉県主催の見学会については、それぞれの県から公募の詳細が発表されます。

まとめ

埼玉鴨場と新浜鴨場は古くからの鴨猟を今に伝え、賓客の接遇の場としても活用される貴重な宮内庁施設です。また、野生の鴨を傷つけることなく捕獲する独特の猟法は、国際的な調査にも貢献しています。鴨場の一般見学会に是非参加して伝統文化の地に赴いてみてはいかがでしょう。

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