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Highlighting JAPAN

寒い冬にはサウナでリラックス

中高年男性を中心に利用されていた日本のサウナは、近年、若い世代や女性の間で人気が高まっている。

日本でフィンランド式の蒸風呂「サウナ」を楽しむ人は多い。公益社団法人日本サウナ・スパ協会によると、日本のサウナ愛好者は1,000万人以上に上るそうである。

日本で初めてサウナが設けられたのは1957年、東京・銀座の入浴施設であった。それからしばらくの間、サウナの普及は進まなかったが、1964年の東京オリンピックをきっかけに状況は一変する。

「フィンランド選手団が、選手村に組み立て式のサウナを設けたことが報道され、サウナの知名度が一気に上がったのです。その後、日本の都市部を中心にサウナ施設が増えていきました」と日本サウナ・スパ協会事務局長を務める若林幹夫さんは話す。

当時、サウナの利用者の多くは男性サラリーマンであった。好景気の中、仕事に追われるサラリーマンにとって、会社帰りに入るサウナが仕事の疲れを癒す絶好の場所となったのである。帰宅する時間もないほど多忙なサラリーマンの中には、終夜営業の入浴施設でサウナに入り、併設の休憩所で仮眠を取った後、会社へと再び出勤する人もいた。

1980年代半ばになると、大型の入浴施設である「健康ランド」、旅館やホテルなどの宿泊施設、スキー場やゴルフ場などのレジャー施設にもサウナが続々と導入され、誰もが気軽に利用できるようになった。しかし、当時は「熱くて、息苦しい」というイメージも根強く、利用者は依然として中高年の男性が中心であった。

しかし、2010年代前半、そうした状況に変化が起こり始める。大きなきっかけとなったのはSNSであった。SNSを通じて、「サウナ―」と呼ばれる全国のサウナ愛好家(以下、「サウナ―」という)がサウナの魅力、各サウナ施設の設備やサービスの評価を広く発信し始めたのである。サウナで汗を流した後、水風呂や冷水シャワーを浴びる「温冷交代浴」で高いリラックス効果を得られることも知られるようになり、サウナには縁遠かった若者や女性が、徐々に足を向けるようになっていった。また、高温の石に水をかけて蒸気を発生させ、室内の湿度を一気に上げる「ロウリュ」や、そうして発生した蒸気をタオルであおぎ、熱波を利用者に浴びせる「アウフグース」など新たなサービスを取り入れたサウナ施設が増え、サウナーの増加を後押しした。

「アウフグースにはラベンダーやカモミールなどのアロマオイルを混ぜた水を使うため、リラックス効果も高いと言われます。スタッフがタオルを激しくあおぐパフォーマンスには、ショー的な面白さもあります」と若林さんは話す。

2010年代中頃からは、日本サウナ大使のタナカカツキさんによる、時代に合わせて様変わりしていくサウナをテーマにしたマンガ「サ道」が人気を集めたり、テレビや雑誌などのメディアで特集されるなど、更に広がりを見せるようになった。

2015年には、長野県小海町の湖のほとりにある保養施設「フィンランド・ヴィレッジ」でサウナイベント「サウナ・フェス・ジャパン」が始まった。フェスティバルでは、野外に設置されたフィンランド製のテントサウナや移動式のトレーラーサウナなど様々なサウナを楽しめる。しかも、サウナに入った後、湖に入って身体を冷やすという日本ではまれな体験もできるため、サウナーに大人気のイベントとなっている。2019年9月に開催された4回目のフェスティバルの会期は3日間、各日200名限定のイベントだが、約3600人の応募があった。

また、各地の人気サウナを訪れるサウナーも増えている。冬に特に楽しめるサウナとして、サウナーの評価が高いのが北海道上富良野町の白銀荘である。十勝岳の中腹に建つ白銀荘は大自然に囲まれた登山者のための温泉宿で、冬には露天風呂やサウナ室から美しい雪景色を眺められる。澄み切った冷気と雪で身体を冷やせるのがサウナーにとって最大の魅力となっている。

「スマートフォンで一日中誰かとつながっている時代、サウナは自分自身と向き合う一つの場になっているのだと思います。その一方で、立場を超えて裸の付き合いができる場としても注目され、サウナでミーティングを行う会社もあるようです。今後、協会としても、サウナの多様な魅力を発信していきたいですね」と若林さんは話す。